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<研究1部報> PCCSと色のユニバーサルデザイン
                      −混同色と Hue & Tone 基準色−

COLOR No.154掲載

加齢による変化、色覚遺伝子のタイプ、目の病気などにより、人の色の感じ方は一様ではありません。そのような、多様な色覚特性に配慮し、できる限り全ての人にわかりやすくなるように予め設計すること、それが「色のユニバーサルデザイン」という考え方です。その取り組みは近年積極的に進められています。
当研究所では、色のユニバーサルデザインへのPCCSの活用法を検討しています。本稿では、色覚異常の人には色みが同じに見えて、区別しづらい色を表す混同色線と、PCCSの色相・トーンの代表色との関係を図に示してみました。下図は、色相・トーンの基準色を、xy色度図上にプロットしたものです。明度3〜7の色を抜き出し、上図にはP型(1型2色覚)、下はD型(2型2色覚)の混同色線を書き入れています。点線は無彩色を通る混同色線です。

<Hue & Tone 基準色と混同色線>
グラフ(a)
グラフ(b)

本図ではスペースが狭くやや読みにくいですが、PCCSのカラーカードやチャートをご用意いただければ、通常のカラー版色度図を見て把握するよりも、色覚異常の人が区別しづらい色を把握しやすいと思います。
試しに、色覚異常の人には区別しづらい色の組み合わせを図から拾って挙げてみます。

  • 明るい茶(dp6)−黄緑(dp10)−橙(v5)−濃い黄(dp8)
  • 青〜紫(v17・v18・v19・v20・v21・v22)
  • 赤と緑(P型:v2-v13、v3-v12、D型:v1とv12)
  • ピンク(lt24)−水色(lt14・lt16)−灰色(N7)  等です。

また、この図を使えば、ある色に対して避けた方がよい色、問題がない色を見つけることができます。例えば、明るいオレンジ(b5)をマークや文字に使う場合、図中のb5を探し、その混同線上に乗る色(明るい黄緑(b11)など)は背景や識別色として避けた方がよいのです。
なお、色覚異常の人にとって混同色線上に並んだ色の色みはほぼ同じに見えますが、明るさが少し違えば、違う色であると判断することは容易です。しかし、その色がなに色であるかを同定することはとても難しいのです。例えば、明度7の黄緑と明度6の橙は明るさが違うから違う色であることはすぐに分かっても、それぞれがなに色であるかは、はっきりとしません。
同じ色であっても、一般型の色覚特性の人が見る明るさと、P型、D型の色覚特性の人が見る明るさには違いがあるようです。顕著な例として、P型の色覚特性の人の場合は長波長の感度が大きく低下し、赤が暗く見え、黒との区別がつきにくくなります。色覚異常の人にとっての実効輝度、明るさ感などの検討が重要であることが示唆されます。

これまで述べたPCCSと混同色との関係分析の他に、色研では、P型、D型、そしてT型(3型2色覚)の特性をもつ人が区別しづらい色の組み合わせを、同時に把握できる色票集の検討、試作を行ないました。
本号研究第2部報に紹介されていますので、併せてお読みください。
〈研究第1部 名取 和幸〉

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