埼玉県岩槻市には人形作りの工房やお店が数多くあり、日本一の人形の町といわれています。桃の節句、端午の節句に飾られる優雅な雛人形、勇壮な五月人形、その他様々な表情をもつ美しい日本人形が町のあちらこちらで作られ、飾られています。もともと岩槻周辺は人形作りに欠かせない上質の桐や豊富な水に恵まれており、江戸時代、日光東照宮造営の際に岩槻に立ち寄った伏見の人形師がこれに着目して人形作りを始めたのが岩槻人形のおこりだといわれています。人形の頭部は原型からとった型にのりで練った桐の粉をつめて型どり、ガラスの目を入れて、胡粉を塗り重ね、目を切り出し、筆でまゆや口を描きます。
今回は人形の肌の色となる胡粉(天然かきの貝殻を粉にしたもの)と、口紅として用いられる日華(硫黄華と水銀朱が混合されている絵具)、本朱赤、又頬紅として胡粉と混ぜて用いられる本洋紅について測色してみました。
それぞれ、人形に用いる場合と同様に、胡粉は三千本にかわ、日華と本朱赤はアラビアのりと練り合わせ、白画用紙に塗布し乾燥させて測色を行ないました。本洋紅は水に溶けにくいことから、実際には上塗り胡粉と混ぜて粉体で用いますが、ここではアラビアのりで練り合わせています。
胡粉は不透明な白色、日華は鮮やかな黄みの赤(緋色)本朱赤は鮮やかな赤、本洋紅は濃い赤(茜色)を呈しています。