梅雨期に入り、季節の花、紫陽花とハナショウブが色鮮やかに美しく咲き誇り、各地から花便りが届く頃となりました。前号に引き続き花色の測色データをご紹介いたします。
今回の花はハナショウブとキショウブです。
ハナショウブはアヤメ科アヤメ属の植物で北半球に広く分布し、その仲間は約200種、また園芸品種は1,000種ほどあるといわれています。
品種群は江戸、肥後、伊勢、外国系ハナショウブの4種に区別され、その花色は、紫、青紫、赤紫、しろ、ピンク、絞り、吹きかけ、覆輪、2色花、白地に紅紫筋入り...など様々な色彩が見られます。どれもみな、優美で純日本的な趣が深く感じられます。
慣用色名の中に『菖蒲色』という色がありますが、この色は紫色を示します。今回は鮮やかな色調を持つ紫と赤紫、白のハナショウブと黄色い花を咲かせるキショウブ、また、参考として色票化された『菖蒲色』についても測定を行いました。花びらは裏透けの影響を考慮し、複数枚重ねて測定しています。その結果から、色票の『菖蒲色』と紫の花色がやや異なる値を示していますが、これは花びらを重ねていることによって、実際に見る花よりやや濃い色になるためと考えられます。またベンジン、アンモニア、塩酸等の薬品を用いて色素判定のテストを行ったところ、紫系はアントシアン類、白・黄はフラボン類であるということが推定されました。