<測色資料> ビールの色
COLOR No.171掲載
今年の夏は猛暑を通り越して酷暑であった。ビールに癒やされた人も多かっただろうと思う。すでに冬を迎えつつあるこの時期にビールでも無いだろうとも思うが、季節にかかわらず渇いたのどを潤すあの感覚は酒豪ではない私でも格別である。正月に暖かい部屋でビールの飲み比べ、いや色比べでもしていただきたい。
酒店に行くと数え切れないほどの銘柄があり、ビール通のサイトを見ると世界中の様々な色のビールの存在を教えてくれので、測色がたのしみである。ビールの色は古くから管理されているようで、ヨーロッパ醸造協議会によるEBC法と米国醸造化学者学会が採用したSRM法の2つ主な色評価指標があるという。両指数はおおむね2:1で互換性があり、SRM法は水質検査などでよく使われるロビボンド値にほぼ等しいとの説明もある。SRM法では0.5inでセル測定した430nm光の吸光度の10倍値をSRM値とし、濃色ほど値が大きくなる。
さて、今回は近所の酒専門店に行き見繕ってきた。発泡酒もあり迷ったが、今回はビール限定でメジャーな商品を7点ほど選んだ。
1:キリン 一番搾り黒生
2:キリン ラガー
3:サッポロ 黒ラベル
4:エビス プレミアムエビス
5:アサヒ スーパードライ
6:サントリー プレミアムモルツ
7:バドワイザー バドワイザー
測定は透過率測定として、通常通り日本電色製SD-7000分光色彩計を用いて10mm長の透過セルで精製水を基準とし、分光透過率を測定し、CIELAB値と430nmの透過率に着目してみた。色度からは試料1を除いて色相の違いはなく、濃淡の違いのみといえる。
SRM値はセル長を補正して下式で求めた。
SRM値=-log(T1.27)×10 透過率Tは比。
結果を見るとメジャーな銘柄を選んだとは言え、予想外な結果であった。写真1は紙コップに深さ3cmほどに入れ目視で並べたものだが、試料1を除いてほとんど差異が無い。目視での識別は、試料4はわかるが、それ以外はかろうじてわかる程度で目視評価は難しい。その意味ではSRM値は的確な評価であった。
写真1 評価に使用したビール
表1 測色結果 (D65, 10°)
試料 |
L* |
a* |
b* |
C* |
Hab° |
透過率 (430nm,%) |
SRM |
1 |
27.3 |
37.6 |
44.1 |
58.0 |
49.5
|
0.2
|
34
|
2 |
94.7 |
-2.9 |
23.8 |
24.0 |
97.0
|
46.9
|
4
|
3 |
94.0 |
-2.6 |
25.1 |
25.3 |
95.9
|
44.2
|
5
|
4 |
90.9 |
-1.7 |
30.3 |
30.4 |
93.2
|
33.9
|
6
|
5 |
94.4 |
-2.4 |
22.4 |
22.5 |
96.2
|
48.5
|
4
|
6 |
93.9 |
-3.2 |
27.3 |
27.4 |
96.7
|
41.0
|
5
|
7 |
94.8 |
-2.5 |
21.6 |
21.7 |
96.6
|
50.3
|
4
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図1 分光透過率
図2 a*b*図
〈小林 信治〉
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