名札プレートの色を表示する方法では、目的に応じて幾つかの方法が用いられる。例えば、レモンの果皮の色の表示は、レモン色、黄、ストロングイエロー、s8、5Y
7.5/10、(Y = 53.33、x = 0.4503、y = 0.4499)、(L* = 79.52、a* = 1.79、b* = 69.05)などである。どれも同じ色を表しているが、色名であったり、記号・数値であったり様々である。数値で表す方法は国際的に標準化されているCIE表色系を用いたものである。CIE表色系で色を表示するには、一連の規約された方法によって分光反射率を測定し、その分光反射率を用いた測色計算により行う。一連の規約された方法は、CIE
15:2004/JIS Z 87 22:2009(色の測定方法−反射及び透過物体色)で規定されている。JIS
Z 8722は、2009年に最新版が出版されている。2009年版は、2000年版を改正したものである。その主な改正点はJIS解説書及び日本色彩学会誌Vol.33
No.1 pp.28-32(2009)に記載されている。
JIS Z 8722の方法に従って、事務用品売り場で購入することのできる名札プレートを測定した分光反射率の例を図に示す。名札プレートは、プラスチック製の厚さが2mmで、裏面においた鉛筆などがやっと透いて見える程度に透過性をもっている。JIS
Z 8722は標準的な測色の条件を規定しているが、実際の測定における細かな要件を規定しているわけでなく、それらは測色する者に委ねられており、場合によってはその条件を測定結果に付記することが必要になる。
名札プレートのように透過性のある試料では、JIS Z 8722に規定されている以外の要因によって、測定結果に透過性の影響が現れる。図には上から順番に(1)から(4)の番号を付した分光反射率が描かれている。(1)は測定器に名札プレートを装着する際の押さえ板が白で、分光反射率を測定している名札プレートの部位より広い範囲を照明した時の結果である。(2)は(1)より照明範囲を狭くした場合で、(3)は(1)の押さえ板を黒に代えた場合である。(4)は(2)の押さえ板を黒に代えた場合である。押さえ板の色を代えることによって、名札プレートの照射側から反対側に透過する光を含めて測定するか、除去して測定するかによる違いが現れている。また、名札プレートの照射側からプレート内に入った光が反対側方向だけでなく水平方向にも進んで、再び測定部位に出射してくる光があり、その量は照明面積の範囲によって変化する。このような光の影響は(1)と(2)及び(3)と(4)の違いに現れている。分光反射率の違いによってどの程度色が変化しているかを知ることは難しいので、JIS Z 8721(色の表示方法−三属性による表示)によって、色相、明度及び彩度の記号で表すと次のようになる。
(1) 3.3G 4.5 / 14.1 (2) 3.3G 4.4 / 13.8
(3) 3.3G 4.4 / 13.6 (4) 3.2G 4.4 / 13.3
彩度の違いが顕著で、測色の実作業ではJIS Z 8722で規定されている要件だけでなく、実作業の諸条件を標準化することが重要であることがわかる。 (研究第2部 小松原 仁)