花の色は移ろいやすい。きのうまで咲く気配も感じられなかった桜が、気が付けば花吹雪に変わっている。そんな桜の季節に色の移ろいやすさを実感する。日本人の心象に焼き付いている移ろいゆくものへの郷愁は、製品の色彩デザインにも見られるように思う。
色彩が購買力に影響する製品の一つに自動車が挙げられるが、最近の自動車の多くは、見る角度や光の当たる方向によって色が変わって見える塗料が利用されている。いつも変わらない色ではなく、状況によって移ろいの効果を取り入れた例といえる。
様々な色を呈する塗色や印刷色の見えを総称してマルチカラーという呼称が使われている。塗料の場合は、アルミニウムの鱗片状の粉末を塗膜に配列したメタリック塗料や高い透過性を有するマイカ(雲母)の表面を二酸化チタンや酸化鉄などで被覆した顔料を用いたパール塗料を用いて塗色するとマルチカラーの効果が得られる。アルミニウムの鱗片状の粉末だけを用いると、見る角度や光の当たる方向によって明暗が大きく変わって見えるが、アルミニウムの表面に着色顔料等をコーティングした着色アルミニウムでは、パール塗料と同様に、干渉によって色も変わって見える効果がある。
今回は、色が変わって見えるアルミ固溶板状酸化鉄顔料(MIO)を用いた塗板を測定した。測定条件は、45度照明/変角受光(0〜40度)である。見る角度が正反射角に近づくにつれて色相、明度及び彩度が変化する様子を見ることができる。受光角40度では、波長によっては反射率が100%を超えるようになり、場合によっては、発光色のように輝いて見える。 (岩槻スタジオ 測色資料担当)