草木染めの中で、色素を抽出してその液に直接浸けて染めることのできる直接性染料の代表として知られている鬱金は、インドを中心として熱帯、亜熱帯地方で広く栽培されている宿根性の植物である。根には有名な黄色色素のクルクミンが含まれており強肝作用があることから、昨今の健康ブームから、鬱金茶として好酒家に支持されている。
我が国には室町時代に渡来されたとされており、紅の下染めとして使われている。また、幼児の下着や風呂敷にも使われていたといわれているが、染料としてより、沢庵漬けの黄色い着色をはじめとする食用染料として親しまれている。我が国の産地としては、沖縄が知られており、江戸時代には島津藩の専売物として保護され、高価なものとして流通していた。今日でも、沖縄の特産品として知られている。
鬱金と同様に黄色系の色素で、食用染料として用いられているものにサフランがある。サフランは多年性植物で、1sの染料を作るのに10万本以上のめしべを必要とするため最も高価な染料の一つである。我が国に渡来したのは幕末といわれ、高価なために、紅花で染める黄色が代用されていたといわれている。歴史的逸話も多く、昨今騒がしている豚肉の生産地の詐称ではないが、ほかのものを混入して販売したことが発覚した商人が、火刑に処されたことが伝えられている。時代をこえても、同じようなことを繰り返すのは、人間の性といえるかもしれない。
今回は、白山紬を鬱金とサフランで染めた染布を測定した。染布は、吉岡氏の伝統の色(光村推古書院刊)から選んだ。 (岩槻スタジオ 測色資料担当)