三月三日は、五節句の一つ「桃の節句」として、雛人形・白酒・菱餅・桃の花を飾る。この習わしは、上巳(じょうし)の節句に人形で身体を撫でて、汚れや災いを移した後に、川に流してお祓いしたものが、人形が永久的なものになるとともに飾りつけるようになったものと言われる。この歴史はそう古くはなく、江戸時代はじめからである。
雛人形とともに飾る桃は、バラ科サクラ属の落葉小高木で、中国が原産で、紀元前1500年頃の殷の時代の遺跡から核が出土している。日本には、「古事記」や「日本書記」に記述があり、弥生時代前期に渡来したものと考えられている。色名の「桃色(2.5R
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8102)」は、万葉集の「桃花褐の浅らの衣浅らかに思いて妹に逢はむものかも」(巻十二)に見られるように、古くから用いられていたものと見られる。染め物にも「桃染め」といわれる紅花で淡く染める方法が伝えられており、美しくさいた盛りの桃の花は、浅い春の色として親しまれている。
今回は、桃の花と菱餅、菱餅の浅い緑として使われている菜の花を測定した。菱餅には濃色が使われているものも見られるが、ショーウィンドに多く見られた浅い色を使った例を測定した。桃の花の測定結果は、JIS慣用色名の代表値より、やや紫みの色相になっている。
(岩槻スタジオ 測色資料担当)