本紙125号で草木染めの測定例を紹介した。その中に濃藍と薄藍が入っている。藍は堅ろう度が高く、退色しづらいという特徴を持っているため、世界各地で最もよく使用された染料である。
藍には以下の様な品種が知られている。
- 印度藍 (原産地:インド、生育の北限:北緯25度)
- 琉球藍 (原産地:インド北部、生育の北限:北緯30度)
- 蓼藍 (原産地:インドシナ、生育の北限:北緯30度)
- たいせい系 (原産地:中部ヨーロッパ、生育の南限:南緯30度)
これらの品種は原産地以外の地域に広く伝えられ、正倉院に残された衣服の端裂の中にも見ることが出来る。吉岡氏は伝統の色(光村推古書院刊)で伝統の色の復元を試みているが、その中で紹介された印度藍の染め布を測定してみた。
これらの染めは、印度藍(沈殿藍)に茎染、六葉茜、水飴、苛性カリ、水を加えて還元発酵させた原液を用いて染めたもので、染色時間を変えて薄藍から濃藍まで復元している。なお、No.5はNo.3を一昼夜干して後に二度染めして作られている。実際の染色処方を知りたい方は、伝統の色を参照されたい。前回の資料と比較すると、No.1からNo.3は、さらに薄藍になっており、ピーク波長も長波長側にシフトしている。No.4及びNo.5は、前回資料と近似した特性になっており。ピーク波長と吸収波長は概ね一致している。天然藍による基本的な分光分布と見られる。