古代遺跡からの新しい出土品が発見され、マスコミをにぎわしている。
高松塚移籍で有名な明日香村では、富本と書かれた銅銭が発見され、日本での通貨使用の起源について議論されている。
富本銭には中国の五行思想に関連する文様も刻印されているという。五行思想といえば、高松塚遺跡の壁画に記された文様もそうであり、7世紀ごろの日本に大きく影響を与えていたことがしのばれる。 その当時の顔料には自然な岩絵の具が用いられたと思われることからも想像できることである。
自然物の色を用いたものは時代を超えて当時を偲ばせてくれる手がかりになる。
ところで、早春の時期に目を楽しませてくれる花にスイートピーがある。甘く快い香りがロマンスと結びつけられるのか、流行歌の歌詞にも登場する。南欧原産で、ピンク、白、赤、紫、藤色の花色が春いっぱいまで咲き続ける。
ところが、花屋さんの店先で、先日黄色いスイートピーを見かけた。花屋さんの話では、自然なものでなく、吸い上げて人工的に着色したものだという。外見上は全く自然なものと変わらないので、違和感無く珍しい可憐な花色としてアレンジメントされているという。
こうなると、自然な花色といえども時代を超えた語り部とは言えなくなってしまい、自然とはなにかを考えさせられてしまう。
下表はスイートピーと同じ時期の花で、最もなじみのある花の1つであるチューリップの黄色とスイートピーの黄色を比較したものである。スイートピーの白とあわせて比較してみると、自然と人工の黄色とでは分光特性に差異が無く、白への自然なグラデーションになっているように見える。
スイートピーはどんな染料を吸い上げて黄色になっているのだろうか。