本誌99号を最後に連載を中止していました測色資料が再連載されることになりました。95号や96号に取り上げました花色は、四季折々に目を楽しませてくれる身近な色として測色資料として度々取り上げていますが、品種の改良や輸入品種の急増によって花の種類が急増し、聞き慣れない花名が店先に並ぶようになっています。
花色は、色素の種類、量及び分布によって様々な色を呈するばかりでなく、表面構造(凹凸、毛の有無、そりなど)や内部構造(表皮細胞の配列、形、大きさなど)の差によって反射並びに透過特性が異なることによって発色が異なります。
しかし、基本的には花に含まれる色素が最も重要な条件になります。 植物色素としては1)クロロフィル(葉緑素)、キサントフィル、2)カロチノイド、3)アントシアニン、4)フラボン、フラボノール、5)ベタシアニン、6)ベタシアニン、ベタキサンチン、7)オーロン、カルコンなどが知られていますが、花色としては2,3,4が代表的な色素と言えます。
カロチノイドは黄色、オレンジ、赤色に発色し、アントシアニンは赤(紅)色、ピンク、青色、紫色に発色し、フラボノ・フラボノールは白色、クリーム、淡黄色に発色することが知られています。このような色素によって発色する花色は、色空間全体に分布しているように思われがちですが、実際に測定してみると図のようにごく限られた範囲に分布していることが判ります。
測定は、花弁を数枚重ね合わせて裏透けの影響をできるだけ抑えるようにして分光光度計で反射率を測定したもので、透過光が反射光に重なることによって生じる花色特有の鮮やかさと比べて若干彩度が低めに測定されているきらいはありますが、花色の色度分布の特徴を見事に表しています。
色座標a*b*の第2象限における色度限界は葉色の色度分布と接しており、クロロフィル(葉緑素)が植物の生命を維持するために最も重要であることを示しています。
また、第3象現の空白は、アントシアニン(花青素)による代表的な花色であるアヤメの測定結果(96号参照)から推定されるように、この色素が短波長域と長波長域とに反射を持つ二峰性の分光分布を持っていることに起因していると考えられます。
最近の品種改良では、第2象現及び第3象現の空白、特に第3象現の空白に注目し、バイオテクノロジーを利用した研究が進められており、幻の青いバラが開発されたとのニュースが新聞報道になったことがありますが、まだ実際に目にすることができないのは残念なことです。
測色資料の再連載にあたり、しばらくは、四季折々の花色をテーマに植物色素の特徴や花色と関係のある色名について紹介していきたいと考えています。 ご意見や取り上げてほしい花色がありましたら、岩槻スタジオ測色担当までご連絡下さい。