<研究1部報> 色研による色彩集計ソフト「PCCSカラーカルク」の開発とソフトの概要について
COLOR No.171掲載
さまざまな色彩データから、色の傾向を多彩な図表出力により把握できる「PCCS色彩集計ソフト(PCCSカラーカルク)」が完成し、日本色研事業鰍ゥら本年12月末に販売されます。本製品は色研によって開発、製作されたものです。以下にその開発経緯や概要などをご紹介いたします。
〈開発経緯〉
商品、環境、広告他、対象物の色の傾向を把握したい時、皆さんはどうされますか?一般には対象物を測色し、その結果をマンセルやL*a*b*などのカラーシステムにより図示されることと思います。そうすれば出現色の位置を正確に表示することができます。しかしながら、そこからどのような色系統や色調が多くみられるかというような色の出現傾向をとらえたり、色の傾向を一般の方にわかりやすく伝えたりすることは難しいのではないでしょうか。
そこで、日本色彩研究所ではPCCSのトーン区分と対応するように色を系統的に区分して表す「調査用カラーコード(PCCS系統色名)」による色彩集計法を1964年に発表しました。それは1971年に改訂され、日本色研事業鰍ノおいて現在も「調査用カラーコード」として発売されています。この色名体系はJISの系統色名とは異なり、日常的によく使われるピンクやブラウンといった基本的な色名区分が用いることにより、表記から色をとらえやすくなっています。また、どの程度の細かさで色の傾向をとらえたいかに応じて、系統区分の細かさを自由に選べるという大きな特徴をもっています。最も大きな区分は、ピンク系、ブラウン系というような色の系統レベルの「大分類」で、次いで大分類にトーンの違いも加え、ピンク系でもペールピンク、ディープピンク、ダルピンク…と細分化した「中分類」レベル、そして最も細かい「小分類」では、色相の偏りによる違いも加味して色を分類します(例:ペールパープリッシュピンク、ペールピンク、ペールイエロイッシュピンク)。こうして、階層性をもつPCCS系統色名区分とその集計表などにより、色の傾向をわかりやすく示すことができるのです。
当初、マンセル値から調査用カラーコードへの変換は、相互の対応を示すカラーコードアトラスという図を用いて手作業で行っていましたが、やがてマンセル値から調査用カラーコードへの変換、色名区分による出現表の作成を行うプログラムも所内用に作られ長年にわたり使用されてきました。
そして2017年度と2018年度には、その色名区分や色名名称が現代の人々の認識にマッチしているかについての検証調査と改訂作業が行われました。その研究は研究第1部の大内啓子主任研究員が担当し、並行してマンセル値からPCCS系統色名に分類し分類表などを出力するプログラムも作成され、ソフトの基本形ができあがりました。
そして今年度に入り、この色彩集計システムを多くの方々が簡単にお使いいただけるように一般向けのソフトとして製品化することになりました。細かいチェックを含むプログラム化作業は、同部の佐々木三公子研究員、大内研究員を中心に進められ、そして本ソフトが完成いたしました。
〈特徴〉
このソフトには以下のような特徴があります。
@マンセル値、sRGB、PCCS色相・トーンから色値の変換分類ができ、色の分布傾向がさまざまな表やグラフによりビジュアル化されます。
*製品モデルにより入出力機能の違い有
A一般に広く使われており、出力結果が活用しやすいMicrosoft Excelで動くソフトとしました。
Bプレゼン資料などに使える多彩なグラフや表を用意しました。*作成後の書式編集も自由です。
CPCCSについては、ヒュー×トーンの集計と、PCCS系統色名系による集計を行います。
Dマンセルの三属性によるプロット図も作成されます。*スタンダード版のみ
E画像から指定位置の色を取り込む機能も搭載(画像ファイルでクリック)しました。*スタンダード版のみ
〈製品モデル〉
全ての入出力機能を含むスタンダードモデルと、一部の機能に限定したベーシックモデルがあります。またベーシックモデルには、HVC入力版とRGB入力版の2種類が用意されています。モデルごとの入出力機能の違いはHPをご覧ください。
〈名取 和幸〉
<入出力画面サンプル(スタンダード版)>
@入力画面と色値変換分類結果
※画像キャプチャによるRGB入力例。撮影画像からの変換ですので参考色値となります。
Aトーン別出現率
B大分類出現率グラフ(色系統別22分類)
C小分類(257分類)出現数バブルチャート
本サンプルは出力結果のごく一部を示したものです。
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