<研究2部報> CIEDE2000色差式について(その1―知覚される成分毎の補正)
COLOR No.170掲載
産業界において色差値は、製品色の許容域設定する上で非常に重要である。例えば、製造工程の異なるパーツを組み合わせる場合、色違いの程度を計量して良品/不良品の判定を行う際に設定される。色差値は小さい方がよいが、厳しすぎれば不良品が増えてコスト増加につながるため、ほどよい色差値の設定が必要である。 CIELAB色空間による色差式は(式1)又は(式2)である。
(式1)
(式2)
マンセル表色系の明度5の基準色を対象に、色差∆E*ab = 1の半径をもつ許容円を描いたのが(図1)である。「色差値」と「目視により知覚される色の差」にズレがあることは開発当時から指摘されており、様々な修正色差式が提案されている。近年の色差式は補正のための関数や係数が多く複雑になるため難しいと思われがちであるが基本的には(式2)の知覚される成分である明度差∆L*・クロマ差∆C*ab・色相差∆H*abの3項をそれぞれ補正するのみの単純な構成である。 CIEDE2000色差式(式3)は、
(式3)
明度差∆L'・クロマ差∆C'・色相差∆H'の3項への重み付関数と観察環境のパラメータ関数による補正を基本とし、4項目に補正項の追加により構成されている。この色差式は「JIS Z 8730(2009) 色の表示方法―物体色の色差」(2017年3月21日廃止)の「7.3 CIEDE2000色差式」として採用され、現在では「JIS Z 8781-6(2017) 測色―第6部:CIEDE2000色差式」(2017年3月21日制定)に置き換えられている。先と同様にCIEDE2000色差式による色差∆E00 = 1の許容楕円を描いたのが(図2)である。図1に比べ、中心の無彩色付近では許容楕円は円形に近いが、高彩度が上がるにつれの外周部へ広がるように許容楕円が大きくなること、太線で示した5PB付近の青色では許容楕円が回転していることなどの違いがわかる。これらは、高彩度色ではクロマ差は許容は広いが色相差は厳しい、青色(太線で示した5PB等)は許容楕円が回転するので楕円中心からの彩度の高低によって色相許容に違いが生じるなどといった、∆E*abとの違いがあり注意が必要である。 今回は、CIEDE2000の基本構成に着目して、CIELAB色空間での実例を示したが、次回以降は、補正による重み付関数について解説する予定である。
図1.CIE1976L*a*b* による色差式∆E*ab=1の円(マンセル明度V=5の基準色による)
図2.CIEDE2000色差式による色差∆E00=1の楕円(マンセル明度V=5の基準色による))
〈那須野 信行〉
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