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<コラム> タバコの煙は…

COLOR No.167掲載

 2020年の東京オリンピックに向けて、東京都では受動喫煙対策として飲食店などの建物の中を原則として禁煙にする条例の制定を目指しています。IOCやWHOでは「たばこのない五輪」を推進しており、屋内での完全禁煙を求めています。国でも法整備に向けた検討が行われていますが、与党内に根強い反対があり、その先行きは不透明です。
 タバコが有害な化学物質摂取の主要な要因になっていることは周知の通りですが、タバコが色の識別に悪影響を及ぼしているという、色彩に多少なりとも関わる者として気になる研究*1を見つけたので、ご紹介したいと思います。
 普通の喫煙者、6時間タバコの切れた喫煙者、非喫煙者の3群の色の弁別閾をCambridge Colour Test(CCT)*2で調べました。CCTはコンピュータによって制御された仮性同色表(石原式色覚異常検査表のような図版)を用いた検査で、回答者は図版のランドルト環の切れ目の位置を報告します。CCTはランドルト環の色を変化させながら、背景色と弁別可能な閾値を測定します。色覚多様性*3(この用語が一般化するのでしょうか)を検査するだけでなく、色の弁別力を詳細に調べることが可能です。

Cambridge Colour Testの図版例

Mollon & Regan, Cambridge Colour Test Handbook (2000)より

 その結果、喫煙者は非喫煙者に比べて弁別閾が高く、ランドルト環の色と背景色により大きな差を必要としました。さらに、タバコの切れた喫煙者は普通の喫煙者よりもさらに弁別閾が高くなっていました。これらの実験により、タバコとその化合物の慢性的な摂取、およびニコチンの離脱状態が色の識別に影響を及ぼしていることが分かった、ということです。タバコがこんなことにも悪影響を及ぼすとは、何とも驚きです。

Reference
1. de Paiva Fernandes, T. M. & Almeida, N. L. & dos Santos, N. A., Comparison of color discrimination in chronic heavy smokers and healthy subjects, F1000Research 2017, 6:85 Last updated: 07 AUG 2017.
2. Mollon, J. D. & Regan, B. C., Cambridge Colour Test Handbook, Cambridge: Cambridge Research Systems, 2000.
3. 遺伝の「優性」「劣性」使うのやめます, 朝日新聞DIGITAL, 2017年9月6日.

〈江森 敏夫〉

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