<研究2部報> 分光分布を合わせた色票
COLOR No.166掲載
色見本といっても様々な仕様があるが、多くは基準光源下での色差からみた精度に着目するのが一般的である。つまり基準値にどれだけ正確に作るか、何処まで精度を要求するかである。しかし、中には違うところに着目する色見本がある。たとえば、変退色用グレースケールなどは対となる2色の色差が最大の着目点である。また演色性評価用試験色は分光反射率分布が最大の着目点である。 分光反射率分布の一致とは非条件等色である。一般的には条件等色はある光源で2色が等色したときに他の光源で色差が生じる照明条件等色のことであってその大きさによって色見本の一致度を評価することができる。演色性評価用試験色では試験色を異なる光源で見たときに光源間で色差がどれだけ生ずるかといういわば試験色条件等色を用いることによって光源の一致度を評価するものである。通常は分光反射率分布を定めた仮想の試験色を用いるが、評価結果の検証やデモンストレーションなどでは試験色の実物が必要とされる。しかしながら実試験色の分光分布を仮想試験色に一致させることは原色の制約から完全にはできない。限られた原色を用いて可能な限り一致した実色見本を製作する技術が必要となる。 図1に示す太線は仮想の試験色の分光反射率分布である。この分光分布を再現すべく原色の組み合わせが異なる色見本A〜Dを作成すると分光分布の特徴が異なることが判る。たとえばAは560nm付近に段があり、AとBは500〜540nmの立ち上がりが緩やかである。Cは500〜540nmの立ち上がりは急峻であるが580〜700nmに大きな凹みがある。その点Dは460〜500nmにかけての違いはあるが形状は近似している。 これらの色見本について条件等色度指数を求めた結果を表1に示す。基準光をD65光源とし、試験光にC及びF1〜F12蛍光灯を用いた。多くの光源(今回は12種の蛍光灯下)で条件等色度指数の小さい色見本が分光分布の一致度が高いといえる。今回の例ではCとDの数値が小さいがCは分光分布の形状が異なるため不適当であることからDがベストと考えられる。
図1 色見本の分光反射率分布
表1 条件等色度指数
光源
|
色見本
|
A
|
B
|
C
|
D
|
C
|
0.5
|
0.6
|
0.1
|
0.1
|
F1
|
2.6
|
2.3
|
0.5
|
0.9
|
F2
|
5.2
|
5.1
|
1.0
|
1.8
|
F3
|
6.6
|
6.6
|
1.8
|
2.5
|
F4
|
7.7
|
7.7
|
2.7
|
3.2
|
F5
|
2.8
|
2.5
|
0.5
|
1.0
|
F6
|
5.5
|
5.4
|
1.2
|
2.0
|
F7
|
1.4
|
1.3
|
0.6
|
0.8
|
F8
|
1.3
|
1.2
|
0.8
|
0.6
|
F9
|
3.0
|
2.9
|
1.2
|
1.1
|
F10
|
4.6
|
4.2
|
3.7
|
3.0
|
F11
|
5.2
|
4.7
|
3.9
|
3.2
|
F12
|
6.1
|
5.5
|
3.8
|
3.2
|
平均(F1-F12)
|
4.3
|
4.1
|
1.8
|
1.9
|
最大値
|
7.7
|
7.7
|
3.9
|
3.2
|
〈小林 信治・前川 太一〉
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