<コラム> 三毛猫はアグレッシブ?
COLOR No.164掲載
猫の色と性格の関係については、科学的根拠は乏しいものの、巷間に流布する通説があります。猫の被毛の色は、遺伝子に大きく左右されており、大きく4つのカテゴリに分類できます。(1)白の量(spotting:スポット)、(2)色の濃さ(dilution:希釈)、(3)オレンジとアグーチ(色素のタイプのスイッチ)、(4)ティックド、タビー、スポティッドといった縞や斑点などのパターンに関するもの、などがあります。その中でも特にオレンジ因子は興味深く、黒を発現させる対立遺伝子と共に、X染色体上にあります。オスはX染色体が1本しか無いので、この1本がオレンジ因子ならオレンジ、黒因子なら黒になります。一方、メスはX染色体を2本持っているため、オレンジと黒の両方持つ個体の場合、どちらかが不活性化して機能しなくなります。体内でランダムに不活性化が生じることで、オレンジと黒が混じったトーティー(錆猫)やトービーなどの毛色になります。これに白(スポット)が加わると、キャリコ(三毛)になります。これらの毛色のオスは大変珍しく、30,000匹に1匹ともいわれ、染色体異常(XXY)などの原因がない限り、生じません。
カリフォルニア大学のStelow et. al. (2016)*1は家猫の色と攻撃性の関係を調べるため、インターネットによる調査を行い、1,274匹の猫(♂657・♀617)のデータを分析しました。その結果、伴性遺伝によるオレンジのメス(トーティー・トービー・キャリコ)、黒白そして灰白の猫は他の毛色の猫よりも人に対して攻撃性のスコアが高くなったということです。黒白、灰白のスコアが高くなったのは予想外でしたが、キャリコなどの攻撃性の一部はメスの色のパターンを形成する特定のX染色体の不活性化に関連があるのではないか、ということでした。調査結果は統計的には有意でしたが、報告された攻撃性のスコアがとても低いこと、色タイプによってはサンプルがわずかしか得られなかったことなど、この調査結果を肯定するにしろ、否定するにしろ、さらに調査が必要だということです。
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我家の猫(昨年秋)
本文とは関係ありません
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猫の性格を知り、行動パターンを理解することは、猫とのコミュニケーションを向上させるためにも重要ですが、最近スウェーデンの音声学者がネコ語の研究を本格的に始めたとのこと*2。もし、猫の言っていることが理解できるようになれば、我家の猫とも、もっとコミュニケーションがとれるような気がして、研究の成果が発表されるのが楽しみです。
Reference
1. Stelow, E. A., Bain, M. J., & Kass, P. H. (2016). The Relationship Between Coat Color and Aggressive Behaviors in the Domestic Cat. Journal of Applied Animal Welfare Science, 19, 1-15
2. National Geographic日本語版 2016/4/1, 音声学者がネコ語の研究を本格始動
〈江森 敏夫〉
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