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<研究2部報> 異種光源下で観察される色票の三刺激値計算手順 その3

COLOR No.164掲載

マンセル表色系の基準値は「補助標準の光C・2度視野」の(xc, yc, Yc)が規定されるのみで、分光反射率分布は示されていない。もし、異種光源αのもとで観察した色票の(xα, yα, Yα)を求めたいなら、分光反射率分布を実測すれば計算で求められるが、マンセル表色系で規定される基準値にピッタリ一致する色票は存在しないので、この分光反射率分布を推定できる手法として主成分分析が必要になる。今回は、ASTM D1535補遺[1]とJIS Z 8721付属書[2]の基礎で使用される主成分分析による分光反射率分布の推定について紹介する。
主成分分析による手法は、平均ベクトルと複数の主成分ベクトルを導出してその合成により分光反射率分布を推定し、異種光源αのもと観察した色票の(xα, yα, Yα)へ変換を行うもので、その推定には、多数の実在色票の分光反射率分布データを収集する必要がある。

図1 ASTMの平均ベクトルV0と主成分ベクトルV1〜V3 (Fairman & Brill, 2004)

主成分分析の対象となる色票は、ASTM D1535補遺がマンセル色票(1243色)だけでなくOSA-UCS色票(554色)とNCS色票(1737色)も含めた合計3534色[3]を、JIS Z 8721付属書がJIS標準色票[4]の全有彩色1569色から5つの色群に分類[5]したものをそれぞれ使用している。ASTMは三色票を一括して主成分分析しているが、JISはJIS標準色票の有彩色(図1左)を5つの色群(図1中列)に分類して色相の特徴ごとに個別に主成分分析する違いがある。主成分分析で導出される平均ベクトル(実線)と3つの主成分ベクトル(点線・1点鎖線・2点鎖線)は、ASTM D1535補遺は図1に、JIS Z 8721付属書は図2右列にそれぞれ示した。任意の色票における分光反射率分布は、これらベクトルの合成で求められるが、主成分分析で使用された実在色票の色度範囲内から大きく外れてしまう場合には、分光反射率分布が0〜100%の範囲内に収まらなくなり、物体色の条件を満たさない問題がある。しかし、マンセル表色系の基準値は、実色票としては存在しない高クロマ色もMacAdam limit範囲内で外挿により示しており、そのような外挿基準値の推定も望まれる。
次回は、高クロマ領域の分光反射率分布の推定[6]について引き続き紹介する。

図2 JISの分光反射率分布および平均ベクトルR0と主成分ベクトルR1〜R3
(側垣・高浜・納谷, 1989)


参考文献
[1] ASTM D1535(2013):Standard Practice for Specifying Color by the Munsell System.
[2] JIS Z 8721(1993):色の表示方法―三属性による表示, 日本規格協会.
[3] H. S. Fairman and M. H. Brill, "The Principal Components of Reflectances", COLOR research and application, Vol.29, No.2, pp. 104-110, April 2004.
[4] JIS Z 8721準拠標準色票(光沢版), 日本規格協会, 1976.
[5] 側垣, 高浜 , 納谷, “マンセル色票の分光反射率分布の推定”, 日本色彩学会誌, Vol.13, No.2, pp. 52-54, 1989.
[6] 側垣, 高浜, “マンセル表色系における高クロマ色の分光反射率分布の推定”, 照明学会誌, Vol.82, No.11, pp. 902-915, 1998.

〈那須野 信行〉

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