研究第1部では、近年、高齢者や色弱者(遺伝や怪我・病気で色の区別がつきにくい人の総称)を対象とした委託業務や調査研究を多く行なっています。
また、『色のユニバーサルデザイン(UD)』※に関する色研セミナーにも多くの参加があり、この問題への関心の高さがうかがえます。
しかしながら、色のUDを検討するために必要な知識や方法が書かれたような総合的なテキストはまだ発行されておりませんでした。そこで当所研究員の執筆による本書を全国服飾教育者連合会(A・F・T)と計画し、
この度、発刊の運びとなりました。以下にその概要をご紹介いたします。
(※色のUD :色を適切に活用し、人の特性や能力、年齢、性別、国籍、状況などの違いに関わらず、多くの人が活用できるように考えられた視覚デザインのこと。)
本書には次のような特長があります。
- 基礎から応用までを体系的に網羅した総合テキスト
色のUDに必要な色彩学の基礎知識からその設計方法まで、重要な事項を収録しています。
オールカラー版。 - 高齢者の視覚特性についての解説も含む
遺伝や怪我・病気で色の区別がつきにくい人(色弱者と総称)の色覚特性や設計の話に加え、高齢者における視覚特性やデザインに関する内容も含まれています。 - 混同色を新開発チャートでわかりやすく表示
当所により新しく開発されたマンセル混同色チャート※を用いることで、従来の色度図上に示したものよりも、色弱者に区別のつきにくい色を目で見てとらえることができるようになっています。
(※色弱者に区別しにくい色を、マンセル等明度面に線で結んだもの。「混同色カラーチャート」の名称で頒布中) - PCCS準拠のカラーカードでとらえやすく
入手しやすい配色カード199(日本色研事業製)を使い、色弱者に区別しにくい色の組合せを例示しています。 - 多くの改善事例の掲載と解説つき
色弱者や高齢者にわかりにくい様々な種類の問題とそれに対する改善方法の事例を、約20ページにわたり図や写真を使い解説しています。設計の考え方や方法を具体的に理解することができます。
本書は、色を活用して情報を多くの人に効果的に伝えるために必要な知識と方法を述べた、教科書のようなものです。自治体、企業、クリエイター、教育関係の方など、多くの方々にお読みいただき、わかりやすく、安心できる製品や社会づくりのためにご活用いただければ幸いです。 〈名取 和幸〉