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<研究1部報> 赤の力

COLOR No.156掲載

少々前の事になってしまいましたが、2011年7月22日に当研究所と一般社団法人日本流行色協会(JAFCA)は共同で第2回カラープロファイルセミナーを開催いたしました。今回は、昨年から再び注目度が高くなってきたということで、「ブルー」を取り上げてみました。会場となったJAFCAは6月に神田神保町に移転したばかりでしたが、真剣な参加者にも恵まれ、盛況のうちに終了致しました。第3回目のカラープロファイルセミナーについては、テーマカラーなども未定ですが、開催が決まり次第、当研究所およびJAFCAのホームページで告知いたしますので、よろしくご参加のほどお願いいたします。

そこで、今回は「青」についての研究でもご紹介を、と思ったのですが…。イメージ上では「青」と正反対と考えられる傾向があり、しばしば対にして議論される「赤」について、今年度発表された研究論文をご紹介したいと思います。「赤」については、ここでも度々取り上げているので、「また赤か…」と思われる向きもあるかと思いますが、ご容赦のほどお願いいたします。今回ご紹介するのは「赤を見ると力強く、しかも素早く反応できる」という内容の研究論文です。この論文は、ロチェスター大学のAndrew Elliotとユトレヒト大学のHenk AartがEmotion誌に発表したものです。
Elliotたちはこの研究で、赤の知覚が基本的な運動機能に影響与えるかどうかを調べようとしました。この実験を行うにあたり、彼らは人類や他の動物の威嚇行動についての理論的・実証的研究から、赤の知覚が運動の強さや速さを増強させると予測し、それを実証するための実験を行いました。
実験1では、10代学生30名を実験参加者として、赤色と灰色を比較しました。参加者は大きく赤もしくは灰色で参加者番号が付いた、金具で止められた質問票を渡されます。そして、参加者は赤または灰色で書かれた番号を声に出して読み上げた後に、留め金をつまんで、できるだけ広く開けるように求められました。実験者はその広さを定規でミリ単位の測定をして、最大の力の指標としました。
実験2では、赤と灰色に加えて、青を加えて実験を行いました。この実験では強さに加えて、その速さについても測定しました。18〜31歳の46名の参加者を3群に分け、ハンドグリップと質問票が与えられました。ここでの課題は赤か灰色か青のスクリーン上に"squeeze"と表示されたら、強く握ることでした。実験者は最大および平均の力と、力の上昇率を記録しました。さて、結果は…。
当然(?)ですが、女性よりも男性の方がクリップを広く開き、ハンドグリップを強く握ることができました。ちなみに、文部科学省「体力・運動能力調査(平成20年)」によると、握力は20〜24歳男性は48.11s、女性は28.88sでした。
実験1では、参加者番号の色によって、留め金を開いた結果に差が見られました。赤では平均16.26o、灰色では12.55oでした。
実験2では、背景色によって参加者の握る強さの最大は異なり、平均で赤は289.44N(ニュートン)、青は221.42N、灰色は217.36Nでした。また、平均力、及び最大に達するまでの上昇率も、赤は青や灰色に比べて大きなものでした。
以上の実験結果を見ると、赤はエネルギー増加を誘発しているようにも見えます。色の美的価値についてはこれまで多く議論されていますが、これからは色の機能的価値についても注意を向けていく必要性があるのかもしれません。

イメージ上では、赤は動的で強さを感じる色の代表格ですが、上述の実験結果が妥当なものだとすれば、赤はイメージだけではなく、肉体的にも動きや強さを誘発する色ということになります。私たちは、赤を見た時に生じる肉体的反応を、無意識的にイメージに反映しているということでしょうか。
今度、ビンの蓋が開かなかったら、何か赤い物を見て再トライしてみて下さい。いかがでしたか?成功したら色彩研究所までご連絡下さい。成功多数の場合、赤の色票を「ビン蓋開け補助色票」として頒布……なんて予定はありません。

Reference
・Elliot, Andrew J.; Aarts, Henk. Perception of the color red enhances the force and velocity of motor output. Emotion, Vol 11(2), Apr 2011, 445-449
・Color Red Increases the Speed and Strength of Reactions
http://www.sciencedaily.com/releases/2011/06/
110602122349.htm
・The Color Red Increases Speed and Force of Reactions
http://www.fyiliving.com/research/the-color-red-increases-speed-and-force-of-reactions/
〈江森 敏夫〉

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