研究所では、単色、配色、そしてさまざまな商品色の好き嫌いについて、小・中学生を対象とした調査を昨年実施しました。本稿ではその中から特徴的な結果の一つをご紹介します。
- 小学校低学年男子が好きな色と配色は,圧倒的に金,銀,そしてダイナミックな印象の配色である。
- 低学年女子は,水色とクリアな印象の配色が好き。
- 学年が上がると,特定の色や配色への好みが低下し,好みの多様化が進む。
小2男子の場合,好きな色の1位2位は金と銀で、選択率は67%と61%です。圧倒的に好まれています。配色では赤、黄、黒、青などから成る「ダイナミック」な印象のものに人気が集中しました(選択率57%)。ではこれらの色が、現代の小学校低学年の子どもたちから人気が高い理由はどこにあるのでしょうか。色から受ける印象や連想される事物を尋ねてみればよいのですが、データを取っておりませんので、今の子どもを取り巻く生活環境から考えてみたいと思います。
まず、金と銀はその年代の男子が夢中になるカードゲームの色です。テレビに登場するヒーローたちが身にまとうコスチュームにも効果的に使われる色ともいえます。強さとかっこよさ,それが最も感じられる色でしょう。いつの時代でも男子の一つの理想ともいえるコンセプト,それが現代においては金と銀というわけです。
そしてもう一つ,現代の社会全体がメタリックの時代であることとの関係も指摘してみたいと思います。メタリックやパールなど,キラッ,ギラギラ,シャラッとした輝きが,携帯電話を始めとするさまざまな商品に用いられています。現代ではテクスチャー感と色とが一体となったモノづくりが盛んに行なわれています。金銀への嗜好の背景にはそうしたメタリック感の流行との関係もあるかもしれません。
一方,小2女子が最も好んだのは水色と、水色と白とを組み合わせたクリアな印象の配色です。低学年の女子であれば、女の子色のピンクへの人気の集中を予想していましたが見事に外れでした。トップの水色への選択率が4割以上であるのに対し、ピンクは7位で14%にとどまります。さらに驚いたことには小2女子ではピンクを嫌いな色に上げた児童が19%にのぼり、好きな色として選んだ女子よりも多いのです。なお、水色を嫌いな色とした女子は一人もいませんでした。
ピンクより水色やクリアな配色が好まれるというのは、小学校低学年の女子はピンクを「かわいい」「子どもっぽい」「女の子っぽい」色と感じており、それよりも「きれい」で「すっきり」「さわやか」なイメージの水色を好ましいと感じているからでしょう。なお、バンダイのキッズ携帯「ぱぴぽ!」に関する好きな色調査でも、小2〜小5までの1位は水色であり、ピンクは5歳と小1で1位になっています。女の子ならピンク、という決まりごとがやや崩れ始めているのかもしれません。
このような上位色や配色に対する嗜好集中は小学校低学年に顕著な傾向です。学年が上がり、そして中学になると好ましいイメージの個人差が大きくなり、好む色や配色タイプの多様化が進んできます。中2女子を例にあげれば、それまでの「クリア・水色」「かわいい・ピンク」「カジュアル・黄・黄緑」に加え、「エレガント・紫・菫」「モダン・モノトーンと銀」「さわやかな自然・緑」などの嗜好タイプが生まれていいます。
色の好みには主要色相を好むなど生理的な機構によって作られる部分がありますが、現代の子どもたちにおいては文化、時代の中での直接的な色の体験、そして年齢により好ましいと感じるイメージの多様化が、色の好みの結果に強く反映しているようです。
<研究第1部 名取 和幸>