アメリカで最も人気のあるプロ・スポーツ、アメリカン・フットボールリーグNFL[National
Football League]のシーズンが終わりました。2月3日開催された今シーズンのスーパーボウル(AFC[American
Football Conference]優勝チームとNFC[National Football Conference]優勝チームの間で争われる、NFLの優勝決定戦)では、レギュラーシーズンを全勝で終えたAFCのニューイングランド・ペイトリオッツと、ワイルドカードでプレーオフに進出したNFCのニューヨーク・ジャイアンツが対戦しました。実力・実績に勝るペイトリオッツの優勢が伝えられていましたが、結果は、ジャイアンツの最終第4クォーターでの劇的な逆転勝利に終わりました。
ところで、NFLの試合を見ていると、ユニフォームに青を使っているチームが多くいように感じたので、調べてみました。各チームはチームカラーをベースとしたホーム・ユニフォームの他に、白をベースに背番号などにチームカラーを用いたアウェイ・ユニフォームもあるので、ホーム・ユニフォームについてカウントしてみました。表1がその結果です。このように、NFL全32チーム中、ホーム・ユニフォームのベースカラーに青系を用いているチームが13チームあり、2位の赤系の2倍以上です。
青 | 赤 | 黒 | 緑 | 青緑 | 紫 | 茶 | |
AFC | 7 | 1 | 3 | 1 | 3 | 1 | 1 |
NFC | 6 | 5 | 2 | 2 | 0 | 1 | 0 |
計 | 13 | 6 | 5 | 3 | 3 | 2 | 1 |
2000〜2008年のスーパーボウルに出場した13チームのうち(この間、数回出場しているチームがある)、8チームがホーム・ユニフォームのベースカラーとして青を用いていました。しかも、この9年間で6回は青をホーム・ユニフォームとするチームが勝利しています。もともと青のチームが多いのですから、スーパーボウルに出場するチームに青が多くてもそれほど不思議ではないのですが、それにしても青が多いように感じます。
ユニフォームの色に関しては、チームが赤を用いた場合により高い能力を発揮する、という事が言われることもあります。その理由は定かではないようですが、赤は強い作用を持つ雄性ホルモンであるテストテスロン・レベルを高める働きがあるとする説もあるようです。
もし、赤にそのような効果があるとするならば、NFLにもっと赤いユニフォームのチームがあっても良さそうですが、実際には、青の1/2以下です。赤をホーム・ユニフォームとするチームがスーパーボウルを制したのは2000年以降では、2003年のタンパベイ・バッカニアーズだけでした。もっとも、今年(2008年)のスーパーボウル優勝チームのジャイアンツですが、その試合はホーム・ユニフォームの青ではなく、白ベースに赤のアウェイ・ユニフォームで戦いました。
スーパーボウルの後に行われる、シーズンを締め括るプロボウル(NFLのオールスター戦)では、ヘルメットは各選手が所属するチームのものを用いますが、ユニフォームは、AFCは赤(もしくは白に赤)、NFCは青(もしくは白に青)を着用します。
2月10日に行われたプロボウルは青ユニフォームのNFCが第4クォーターに逆転して、さらに追加点をあげて勝利しました。こうなると、アメリカン・フットボールでは青のユニフォームが有利であるように感じますが、そうでしょうか。プロボウルの1971年以降の結果をみると、両カンファレンスとも19勝19敗の5分で、どちらが有利ということもなさそうです。
NFLのユニフォームで多用される青は多くの人に好まれ、穏やかで落ち着いたイメージを持つとされる色です。このイメージはアメリカン・フットボールのような激しいスポーツとは相容れないようにも気もしまが、このスポーツはかなり緻密な戦略を基に攻守が組み立てられており、プレーヤーはエネルギッシュに突進するだけではなく、フィールド上で冷静な判断が求められているのです。その深い洞察力や精神性のシンボルとして青が用いられているのではないでしょうか。
先ごろ(2008/02/17)、asahi.com(朝日新聞のWebサイト)の記事で、柔道着の色についての研究結果についての記事がありました。柔道では白より青の柔道着の勝率が高く、青と赤に分かれて対戦するレスリングやボクシングでは赤有利という説もあるのですが、この研究では、柔道に関しては、青・白ほぼ同じという結果になるということでした。
色はともかく、勝つためには、実力と運のほうが大切ということでしょうか。〈研究第1部 江森 敏夫〉
*8/12 一部名称に誤りがありましたので訂正させていただきました。