団塊世代(以下、団塊)と、その10歳年長にあたる60代後半(高齢層)の男女600名を対象に、昨年6月に、色彩意識調査を実施いたしました。分析結果の全般的な傾向、回答者属性との関係、過去調査との比較など、報告書・データ集として4月下旬に刊行予定です。本稿ではそれに先立ち、注目すべきいくつかの結果をご紹介します。
○色彩への関心は高まりをみせる(特に高齢層)
1980年、90年当時の50代や60代の人々よりも、色彩への関心なしの低下、関心ありの増加がみられ、その傾向は特に60代後半の高齢層に顕著です。
○団塊は、高齢層よりもグレイ系を嫌わない
好まれる色の場合、性差に比べると、今回の2つの年代による選択の違いはそれほど大きくはありません。しかしながら、嫌われる色においては年代差がみられます。例えば、高齢者では嫌いな色としてグレイを選ぶ人が非常に多いのに対し、団塊世代ではそれほどではありません(図1)。
○色彩好悪の集団差(性と年齢)がみられた色
団塊の男性は、他の群よりも「ライトグリーン」を好む傾向があります(団塊男18.0%、高齢男8.9%、団塊女8.7%、高齢女12.0%)。そして団塊の女性が嫌う色は暗い赤紫です(女性:団塊16.7%対高齢7.0%)。
○時代差と世代差
1980年代や90年代当時、50代・60代の男女は暗い色調を好む人が多かったのですが、最近では暗い色が好まれなくなってきたようです(図2)。今回調査では若年層のデータを取っていないためはっきりと述べることはできませんが、色の好みの年齢差がなくなってきたことの表れであるかもしれません。
また両世代の色彩嗜好傾向を20代、30代の頃と比較してみると、確かに変化はみられるものの、それほど大きくないことがわかりました。
○色への関心が高い人は黒を好む(10.3%対4.1%)
○団塊の男性は、心境を表す色にグレイを選びやすい
今の心境を表す色と、好きな色との間には相関があり、特に高齢の男性において強い相関がみられています(0.739)。回答者にとって現在の心境は、ある程度好ましいイメージとしてとらえられているようです。
しかしよくみると、団塊世代の男性は自分の今の心境を表す色として、他群よりも、グレイや、明度が低く濁った色を多く選ぶ傾向があります。例えば、dp、dk、dトーンとグレイ、黒を選択した割合の合計は、団塊で34.0%、高齢14.6%でした。つまり、団塊の中には、グレイのイメージに対応する心境の男性が多いというわけです。
また同じ団塊でも、女性はより明るい色、鮮やかな色を選ぶ傾向が強いなど、男女による違いがみられます。一方、高齢者は心境を表す色としてビビッドとシルバーを選ぶ割合が団塊よりも高く、また女性では年代が異なっても選択色の傾向は似ていました。
○今の暮らしに満足していない人が選ぶ色は?
生活に満足感がないと答えた人は、今の心境の色としてグレイを選ぶ割合がかなり高くなります(ltGY;満足1.0%不満5.3%、mGY:満足0.3%不満2.0%、dkGYは満足0.3%、不満5.9%)。ちなみにグレイの選択率は収入金額などとは無関係でした。
下記のように、本調査には各種商品における色彩嗜好の質問も含まれており、商品別傾向、商品間関係などの分析結果も述べられています。
【調査概要】
回答者:東京近郊の50代後半・60代後半男女600名
調査年・方法:2007年6月、インターネット調査
課題:77色(金銀含む)の中から該当色を選択
項目:
1)好きな色と嫌いな色
2)商品別嗜好色
(携帯電話、デジカメ、中型セダン、コンパクトカー、カジュアルシャツ、スニーカー、旅行用バッグ、
リビングソファ、システムキッチン扉、バスタブ、自宅外壁)
予価:29,400円(税込)、4月下旬刊行予定 <研究第1部 名取和幸>