最近、機会あって「東京ミッドタウン」と「浅草伝法院通り」の外装色実態調査を行いました。
「東京ミッドタウン」はご存知のとおり、防衛庁本庁が移転した六本木跡地に計画された再開発事業で、今年の3月にオープンしました。広い緑地や商業施設、ホテル、オフィース、美術館などが集まり、
多彩な機能を備えた開発地区となっています。
一方、伝法院通り商店街は、東京都の「地域連携型モデル商店街事業」のひとつとして「伝法院通り江戸まちづくり景観整備事業」を実施し、平成17年12月に開通式を行なっています。
これにより、雷門・仲見世・浅草寺に来訪する人の流れが変わり、伝法院通りも目的地のひとつに加わり、現在では、仲見世と同様の賑わいを見せています。
両者の外装デザインのコンセプトですが、伝法院通り商店街の方は「江戸まちづくり景観整備事業」の名前にも現れているように、江戸のまちなみがモデルでありコンセプトでもあります。
一方、東京ミッドタウンですが、こちらも時代は特定しないものの、やはり日本がテーマのひとつになっているようです。「日本の心と伝統を受け継ぐ・・・」という一文が、開発にあたってのコンセプトのひとつとして発信されていますが、これは外装デザインにもジャパニーズモダンのスタイルとして現れているように思われます。
お互いに「和」がテーマとして上げられ、一方は伝統的な形式を忠実に近いかたちで再現し、もう一方は、伝統のエキスを現代的にアレンジして形にしたといえるでしょう。この両者に色彩面ではどのような違いが生じるのでしょうか。
実施前から、結果が興味深く待たれる調査となりました。 測色データをプロットした図を下のリンクよりご覧下さい。
伝法院通り外装色の特徴ですが、木肌や土壁の色が基調になり、高明度から低明度までYR系を中心に出現しています。彩度は低・中彩度の範囲に納まり、今回測定はしていませんがオーニングの色も低明度・中彩度のものが多く、よく纏まった印象を受けます。
東京ミッドタウン外装は、低彩度色のガラスやメタリックまた天然石の質感が基調となっています。その中にあって、全体景観を特徴付ける色として、白木の肌や明るい砂・土を連想させるYR系の明るい低彩度色が効果的に用いられています。伝法院通りに用いられていたYR系の中でも明るい色に相当します。BG系のガラスカーテンウォールがこの色をより効果的に見せているようです。
暗い色が全く使われていない訳ではなく、サインボードの地や枠の色として効果的に黒が用いられています。このあたりも日本のイメージを現代的に表現しているように見える要因かもしれません。
規模もディテールも異なる2地区の測色データを、殊更に関連付けようという意図はありません。最近調査したデータの中から、最も気になったデータを紹介いたしました。
<赤木重文>