鏡の中、寝癖の付いた髪の毛がざわついていた。一本、白いものがはねている。
「白髪だ!」 プチッと引っこ抜いた。
「頭髪の明るさと白髪の本数、どんな関係性かな?」 頭髪見本を作ってみよう!
早速白い房と黒い房を作った。
白い房は白髪100%、黒い房は白髪0%である。各房は100本を基準とした。要は、白髪1本1%と考えると言う事だ。ここに、「白髪比率(%)」と呼ぶ事に決める。また頭髪の明るさについても基準となる値を決める必要があるので、白い房の白髪100%のものを10の明るさとし、黒い房の白髪0%のものを0の明るさとした。これを「頭髪明度」と呼ぶ事に決める。
それでは、白髪と黒髪の丁度真ん中の明るさを決めていく事にしよう。先に用意した白い髪の房(頭髪明度10)と黒い髪の房(頭髪明度0)を並べ、この間の明るさに合うような白髪比率を探していくのである。
「白と黒の間だから、50%の比率でしょう!」
なんて声が聞かれるので、試しに白髪50本・黒髪50本で作ったものを並べてみる。
「さて、如何なものか?」
ちょっと明るすぎますね! 明るすぎるので白髪を5本抜き、替わりに黒髪を5本入れて明るさを落としていきましょう。大体、頭髪100本中の白髪が20本となったあたりで、バランス良く真ん中の明るさになりますね。頭髪明度5は、白髪比率20%が良いという事です。
それでは次に移りましょう。 頭髪明度7.5は、頭髪明度10と頭髪明度5の真ん中の明るさとなるので、この2つを並べ真ん中の明るさとなるものを探すことになります。 試しに、先程の頭髪明度5としては明るすぎた白髪比率50%のものを置いてみましょう。これはよさそうです。
念のため、白髪比率55%のものと45%のものも試しましたが、どうやらこれが一番良い明るさのようです。 頭髪明度7.5は白髪比率50%が良いという事です。 最後に頭髪明度2.5ですが、やり方は先程までと同様に行います。結果は、頭髪明度2.5は、白髪比率5%となりました。
そしてこれを滑らかな曲線でつないでいきます。
こうして出来た関係性は右のグラフのようになります。
一般に日本人の頭髪量は約10万本と言われていますので、今回のグラフの白髪比率に1000を掛けたものが頭髪における白髪の本数となります。
ちなみに今朝見かけたゴマ塩頭のオジサンは、頭髪明度が2.5といったところなので、白髪比率にして5%。よって、これに1000を掛けた5000本がゴマ塩オジサンの頭に生える白髪本数という事になります。 他人の頭で遊んでみるのも、案外面白いものです。
さて、今回作った頭髪明度と白髪比率の関係は、マンセルの明度関係と良く一致します。
マンセル明度の用語に置き換えると、縦軸を「視感反射率」・横軸を「明度」と読み替える事が出来ます。 マンセル明度関数を作る時も、今回と同様な実験が行われました。 違うのは、マンセル明度では色票を使った事くらいでしょう。
ここで、前回の市松模様について考えてみる事にしましょう。
白と黒の正方形が交互に並んだこの模様は、白と黒が半々の50%であるので、上のグラフの白髪比率を視感反射率・頭髪明度を明度と読み替える事で、明度にして約7.5に相当するのです。
このように白と黒の明るさを基準に、視感反射率と明度の関係性が決められるのです。反射率と明度の関係性を利用した実例としては、コンピュータ上でのモニタのガンマ合わせがあります。縦縞の白黒表示された画像に対して、明るさを合わせていくというもので、白と黒の縦縞を基準として、どのような明るさで画像を表示させれば良いかを調整していくものです。 紙面も残り少なくなってしまいました。 詳しい事については、機会を見つけてまた書くことに致しましょう。 (研究第2部 那須野信行)