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<研究1部報>業務報告 『おばま景観色彩基本計画』

COLOR No.139掲載

昨年度、福井県小浜市から市全域を対象にした景観色彩基本計画の策定業務を依頼され、約1年間にわたって調査から基本計画の立案までを実施しました。

小浜市といえば、拉致事件で一躍知名度の上がったまちです。
業務に着手したときは、知り合いに小浜の話をすると「それはどこにあるの?」という反応がほとんどでしたが、拉致事件に関する一部始終が連日報道されるようになると、「小浜市では景観行政もしっかりやっているんだね。」とか「小浜は結構歴史的にも古いまちなんですね。」という反応が帰ってくるようになり、改めて小浜の地図まで説明する必要はなくなりました。
ただ小浜の古い歴史を説明すると、拉致事件とのギャップに驚かれる方が多いのも、私が小浜を知る前後の認識の違いを考えると、納得させられるところです。
市内には重文級の寺社や文化財が点在し、はなやかに栄えた往年の文化の面影が残っています。また古来、天皇家の食膳に供する海産物などを献上する国「御食国(みけつくに)」であり、その新鮮で豊富な食材と多彩な食文化は、現在のまちにも息づいています。

小浜市では、数年前からまちづくりの基本構想について検討が行なわれていましたが、新しいものを外から導入して一気呵成につくりあげるのではなく、歴史や伝統の蓄積のうえに現在も生活の中に生き続ける地域的特性を育成し、それをまちづくりの資源としていこうという方針が打ち出されました。
そのテーマが「御食国(みけつくに)」であり、それを歴史的バックボーンとして「食のまちづくり」の基本構想が立ち上がりました。
平成13年4月には第4次小浜市総合計画が、5月に小浜市都市計画マスタープランが発表されました。さらに9月には「食のまちづくり条例」を制定し、現在この条例に基づいてまちづくりの施策が推進されています。
今回の業務「おばま景観色彩基本計画」も、この「食のまちづくり」の一環としと策定したものです。

まちづくり施策の第1段階として、小浜漁港に面する産業地域に拠点地区の開発が進められています。開発にあたっては、駅前や商店街との関係をまちづくり全体計画の視点で明確にする必要があります。車や人の流れをコントロールしていく配置計画や、景観の基本計画など様々な切り口から進めていく必要があります。
「おばま景観色彩基本計画」は、色彩を活用して「食のまちづくり」における景観の基盤整備をおこなうものです。 まちづくりは、生活者と来訪者の2つの視点にたっておこなわれています。生活者にとっては、やすらぎを覚え、誇りをもって生活できる郷土を育むことであり、そのやすらぎと誇りは、来訪者にとって、その地域特有の魅力として感受されます。
このまちづくりの目的を達成するために、景観色彩の立場から支援するのが景観色彩基本計画です。

以上の流れを踏まえて、本業務を進めていきましたが、その概要を報告書から抜粋して紹介いたします。
(研究第1部部長 赤木重文)

現状景観の特徴

(1) 魅力ある景観の要因

<自然が豊富な景観>
海岸景観
海岸景観
田園景観
田園景観
河川景観
河川景観
山間部景観
山間部景観
<伝統的建造物や歴史的まちなみ>
伝統的建造物(明通寺)
伝統的建造物(明通寺)
歴史的まちなみ(三丁町)
歴史的まちなみ(三丁町)

(2) 魅力的景観形成を阻害する要因

<屋外広告物><アミューズメント施設・生コン工場外観など>
屋外広告物の立ち並ぶ沿道景観
屋外広告物の立ち並ぶ沿道景観
鮮やかな外壁が並ぶ沿道景観
鮮やかな外壁が並ぶ沿道景観

景観タイプ別分類

  1. 現地調査の結果、小浜には様々な景観が見られたが、それらの景観をいくつかのタイプに分類した。
  2. 小浜市全域の景観を10分類に、その中の市街地景観については、都市景観マスタープランの土地利用の方針に示された指針を加味し、さらに12のゾーンを設定した。

全体計画

現状景観の特徴により、色彩計画の方針を策定したが、大きく4つの方針にまとめることができる。

  1. 現状景観色彩を保全していくタイプ
    現状の良好な景観が資源となる地域が対象であり、この景観を保全していく。伝統的建造物建立地域景観や山地景観が対象となる。
  2. 現状景観色彩を活用していくタイプ
    現状の良好な景観が資源となる地域が対象となり、この景観を育成していく。海岸景観、田園景観、河川景観などが対象となる。
  3. 現状景観色彩を改善していくタイプ
    既存景観には美的景観形成の阻害要因が氾濫している地域が対象となる。色彩の使い方を変えて、良好な景観に誘導する。沿道景観が対象となる。
  4. 景観を創造していくタイプ
    都市計画マスタープラン「土地利用の方針」に示された指針に沿って、景観の創造を推進していく市街地が対象となる。

景観的役割による色彩タイプの設定

景観構成部位の面積などによって、その色彩の景観的役割が異なる。
その役割別に、ベースカラー、サブカラー、アクセントカラーなどの6種類の色彩タイプを設定した。おばま景観色彩基本計画における特徴は、テーマカラーの設定である。
テーマカラーとは、各エリア、特に食のまちづくり拠点地区と商店街のイメージに共通性を持たせる役割である。アクセント的に用いて、おばまイメージを表現する。
小浜の伝統・歴史・地理的特徴からテーマとなる事象を抽出し、色彩によってそれを象徴したもの。テーマカラーと適用地区は以下のとおりである。

意味 適用地区
こがねいろ
黄金色
豊穣、実り、収穫、太陽のめぐみ 全地区対象
おおみいろ
青海色
海、水、魚、空 拠点施設などの海辺地区
駅前地区
ひいろ
火色
お水送りの火、瑪瑙、若狭塗 山間丘陵地区、駅前地区

*モニターの性質上、実際の色と違って見える場合があります

景観タイプ別色彩計画の基本指針

全体計画に各景観タイプの特徴を加味し、景観タイプ別色彩計画の基本指針を作成した。指針には「色彩選定の考え方」「色彩タイプ別指針」をまとめた。

今後の課題

今後は、色彩を活用した魅力ある景観づくりを具体的に推進していくことになるが、そのためには、この基本計画をベースにして、地域ごとに景観色彩のあり方を分かりやすく解説したガイドラインを作成することが必要である。

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