【COLOR No.142掲載】
成功するプロダクトのための−カラーリング講座−
小倉ひろみ著本体価格 2,800円
発行:美術出版社 / サイズ:26×19cm・108P
ISBN:4-568-52021-5 / 発行年月:2004年9月
美しい本である。どのページでも良い。書店で開いてみればわかる。インダストリアル・デザイン畑の方の本は違うなと思う。目を引きつける事例写真やカラー図版。これが第一印象。
それだけではない。何より新しい本である。「プロダクト」に特化した色の本は珍しい。これが本書の最大の特徴である。著者は平面と立体とでカラーニングの考え方に大きな違いがあると述べている。また、色の彩度の違いにより、質感への注目がどのように変化するかの考察も興味深く読んだ。
そしてバランスが取れた実用の本である。本書あとがきに次のようにある。プロダクトの色にかかわるデザイナーに求められるもの、それは直感にもとづく想像力と理論を追求する研究者、技法を習得する地道な職人などのスキル。本書では、プロダクトのカラープランニングの流れに沿って書き進められながら、3つのスキルが織り込まれている。
最も興味を持ったのは、「明度差配色」は立体デザイン向きで、「色相差配色」は平面デザイン向きというくだり。光の当った立体には自然に明暗が生まれ、それは鮮やか、鈍いという色調の変化を感じさせる。またフォルムや質感をより活かすなら色数は少ないほうが良いというのである。吟味しなくてはとも思うがなるほどと感じた。
唯一、高齢者が見た風景の写真が黄色みを帯びている点が気になった。高齢者になると水晶体の黄変は進み、網膜に達する光はいわば黄色の成分が多くなるが、高齢者は白い紙が黄色に見えるわけではない。この部分のみ気をつけてお読みいただければ、大推薦本である。
最後に本書の構成を記す。
1.色の発想
2.発想を造形へ導く基礎知識
3.素材と技法
4.調査と分析、企画
5.プレゼンテーション方法
6.好き嫌いの説明に役立つ基礎知識
7.ユニバーサル・デザインにおける色使い
8.色の伝え方と色管理に必要な知識
9.プロダクト・カラーリングの種類と事例 <研究第1部 名取和幸>