<研究1部報>女性服装色の変遷と平成の傾向(銀座街頭)
COLOR No.170掲載
色研が1953年から銀座中央通りで行なっている女性服装色の定点観測も、65年が経過いたしました。その間、折を見て、時代による服装色の変遷や様々な特徴を書籍や色彩研究、日本色彩学会誌などに報告してきましたが、今回は平成の終わりを迎えた節目ということで、調査開始から平成の終わりまでの変遷を、特に平成時代にスポットを当て、いくつかの特徴を述べたいと思います。
①白服は昭和終わりに増え平成に減少、黒は年間を通して非常に多く着用される色に
白は昭和30年代の頃は主に夏に着られる色でしたが、昭和50、60年代になると春の着用も増え、春と夏の色として非常に多くみられるようになりました。しかしながら平成に入るとその出現は大きく低下し、最近の銀座では以前のように白い服はあまり見かけなくなっています。
一方黒い服は、昭和60年代(1980年代半ば以降)になると秋と冬の季節に極めて多くの女性が着用するようになりました。ちょうどDCブランドによるモノトーンブームの時代でした。その後も黒の人気は高く、平成に入るとそれ以前は黒い服があまり着られなかった春と夏でも多く着られるようになりました。平成を通して、黒は一年中いつでも着られる定番カラーとなったのです。
②ベーシックカラー以外の多くの有彩色は減少
黒い服が増えた分、平成では多くの有彩色の着衣率が減少しました(例:ピンク、赤、オレンジ、緑、青緑、水色、青、紫、赤紫など)。一方、それ以前からあまり変化せず今もよく見られる色として、ベージュ、ブラウン、ダークブルー、イエロー系など、いわゆるファッションのベーシックカラーを挙げることができます。なお平成に増えた色には先に挙げた黒の他にグレイ系があります。
③色調の時代変化…低彩度化が進む
時代が進むに連れあまり着られなくなっていったトーンとして、ペール、ライトトーンといったパステル調の色があります。またブライト、ビビッド、ディープ、ダークトーンなど、彩度が高い、鮮やかな色は1970年代に流行しましたが以降は減少してしまいました。反対に昭和よりも出現が上がっているトーンは、ライトグレイッシュ、グレイッシュ、グレイ、ブラックでした。いずれも地味で落ち着いた印象のトーンだといえます。
要するに、平成になり銀座通りを歩く日本の女性の服のカラーバリエーションは小さくなりました。定番的ないくつかの服装スタイルに集中するようになったためと考えられそうです。かつて銀座はおしゃれをしてファッションを発信する街でした。現在は海外からの旅行者も増え様々な人々が歩くエリアになっています。それとは裏腹に銀座の日本人女性のファッションは画一化しているというのは面白い対比ですね。なお、本データは弊所の研究紀要「色彩研究」の最新号(5月発行)に掲載されますのでそちらもご参考にどうぞ。
〈名取 和幸〉