<研究1部報>VAIOの色と表面の仕上げ-文科省プロジェクト研究「公開実証講座」より-
COLOR No.155掲載
「皆さん、SONYのVAIOにはいくつかのシリーズがあります。中でも、デザイン性とそのバリエーションを最も前面に出したのがEシリーズです。製品コンセプトは以下の通り。際立つデザイン・・・あなたが選ぶあなただけの一台。そのデザインのラインナップがどのように構成されているのか、ちょっと分析してみましょう・・・」
日本色彩研究所は、平成22年度に「工業製品表面性状管理者養成カリキュラム及び教育者向け学習指導書の開発」というプロジェクト研究(文科省)を計画し、その開発に参画しました。研究は、製品の表面の性質や状態により生まれる見え方や印象をとらえ、評価し、それを管理できる人材を育成するための教育システムの構築を目的としています。上に示したのは、その成果を公開した実証講座の中の一節です。講座は2月に3日間にわたって開催され、私が担当したのはその最終日。VAIOの話はその日の最後のコマの中でいたしました。
講座に戻りましょう。
この図はEシリーズのカラー&テクスチャマップです。天板の色と光沢の有無、模様の種類などをカラーチャートの上に重ね合わせて作られています。
マップのベースになっているのは、色研が開発した調査用カラーコードという系統色名区分法に基づくカラーチャートです。ピンク、レッドなどの色の系統と、鮮やか、暗いといったトーンとを組み合わせて、色を体系的に分類表示することができます。そこに出現色をプロットすれば、カラーバリエーションの傾向が一目瞭然です。
光沢については、天板表面に透明なクリア層を設けたもの(VAIOではうるおい光沢と呼ばれています)と、マット仕上げの2種類があり、マップではプロットする四角の実線と点線で区別しています。
天板の模様には、小さな円がマトリクス状に配列されたもの(ドットグラデーション)と、小さな四角が並べられたもの(スクエアグラデーション)と無しがあり、●と□で表しました。他にも、手を乗せておくパームレストの部分をラメ入りの光沢仕上げにしたものがあり、それもマーキングしました。
最初に色の傾向をみましょう。まずは白と黒があります。黒はノートPCの定番色、白もそれに準じてよくみられる基本色です。そしてブライトトーン、ビビッドトーンの強い色調では、躑躅のような濃いピンク、緑、青、紫が採用されています。単純な赤や黄ではありません。またポケットに入るコンパクトなPシリーズのようにカジュアルなオレンジや黄緑ではありません。Eシリーズの表の顔ともいえるのがこれらの色です。他に薄いピンク、暗く渋いブラウン(焦げ茶)というラインナップは他の2つの顔をあらわしています。
次に、色と表面の仕上げとの組合せをみてみます。光沢と模様とラメの組合せには3つのタイプがあります。タイプAは、つやのあるクリア層があり、ドット模様のもの。濃いピンク、緑、青、紫の4色があります。生き生きとして瑞々しいイメージが、色とつやと小さな円形模様により強められています。タイプBは光沢があり、スクエア模様。白と黒の2色のみで、モノトーンのもつ静けさには水玉ではなくてスクエア模様というわけです。タイプCはマット仕上げで模様無し、パームレストにラメ入り。色は白と黒、そして薄いピンクと焦げ茶です。モノトーンや低彩度の色にマットの組合せが、色よりも質感に注意を向けさせます。ラメも比較的控え目です。さりげないファッション性が感じられます・・・
話はまだ続きますが、紙面が尽きました。
巷をにぎわす現代のマルチカラーは、単に多色というだけではなく、多彩な表面仕上げと組み合わせることによって、より明確なイメージづくりが行われています。色彩研究所では、さまざまな製品における色と質感、模様、柄などを分析することにより、問題の抽出、製品の整理、設計、管理などを行っております。一度お気軽にご相談ください。
〈研究第1部 名取 和幸〉