一般財団法人日本色彩研究所

<研究1部報>ピンクの電話

pen COLOR No.155掲載

2011年3月1日、当研究所と財団法人日本ファッション協会流行色情報センター(JAFCA)との共催で、第1回カラープロファイル・セミナーを実施しました。このセミナーは、特定の色について、調査研究による色の心理的側面、文化的側面を明らかにすると共に、現実の生活に現れた現象面からアプローチして、色の理解と活用度を深めることを目的としています。記念すべき第1回のテーマには「ピンク」を取り上げました。

セミナーの反響は大きく、当初予定していた定員を増員して臨んだのですが、申し込みに追いつかないほどでした。改めてピンクに対する関心が大きなことを痛感しました。プロファイル・セミナーは第2回目以降も予定されていますので、開催が決まり次第、当研究所のHP(http://www.jcri.jp)及び一般社団法人日本流行色協会*のHP(http://www.jafca.org)でご案内いたします。

ピンクといえば、最近(2011/03/30)の毎日新聞HPに掲載されていた「女性スマホユーザー、拡大狙え 切り札はピンク」というIT関係の記事がありました。この記事によると、スマートフォンを持っていない女性約400名を対象に調査したところ、欲しい色はピンクが44%で最も多く、続いて白、黒、赤が30%台ということでした。

スマートフォンは携帯電話とパソコン・携帯情報端末(PDA)の機能を組み合わせた多機能携帯電話という性格のせいか、最近までメカニカルで機能的な印象を与える黒や白が主流でした。発売時に大きな話題となりニュースにもなったapple社のiPhoneは、日本で発売が開始されたモデルのボディーカラーはブラックとホワイトでしたが、最新モデル(iPhone 4)で発売されているのはブラックしかありません。

Google社がモバイル用プラットフォームとして開発を進める無償で利用可能なプラットフォームAndroid(アンドロイド)搭載のスマートフォンを各携帯電事業者は相次いで発表し、スマートフィン市場は確実に大きくなってきています。各社はさらなる販路拡大のため女性客獲得に力を入れ始め、女性客が求めている「コンパクトで持ちやすい」端末や、「カラフルでかわいい色」の端末を市場に投入し始めました。その「かわいい色」として最も望まれているのがピンクということです。

pinkとpale pinkのイメージプロフィール

昨年末に、スマートフォンを含めた携帯電話の色を調べる機会があったのですが、ボディーカラーのラインナップにピンクがある機種が多いことに気づきました。また、発売当初はラインナップに含めていなかったピンクを、後から新色として追加している機種もいくつか見受けられました。携帯電話事業者によっては自社が扱っている携帯電話の色を分類して、色から選べる工夫をしています。それによると、いずれの事業者でもブラックとホワイトを含む機種が多いのですが、有彩色の中ではピンクは最も多く用いられている色の一つです。調べてみて、こんなにピンクが多いとは、少し驚きもありました。
ところで、ブラックやホワイトしかないスマートフォンのユーザーは「かわいい色」は諦めるしかないのでしょうか?そのせいか、iPhoneやその他のスマートフォンにはケースが多数販売されていて、色、素材、模様など様々なバリエーションの中から、好みにあったものが選ぶことができます。
以前当研究所が調査したデータによると、ピンクには女性的・明るい・やわらかい・軽いといったイメージが強く(fig1)、連想語としては「春」「桜」「やわらかい」「かわいい」「赤ちゃん」「女の子」といった単語を多くの人が選びます。一昔前であればピンクは女性の定番カラーで、男性は多少なりとも敬遠する色でした。しかし、最近ではファッションなどでもピンクを使いこなす男性は、センスが良くかっこいいと言われます。確かに、今時の”男の子”たちは昔の男の子(今のオジサマたち)に比べて、ピンクが似合うように感じます。これは、ピンクという色が持つイメージと、最近の男の子のイメージが近づいてきたということでしょうか。

〈研究第1部 江森 敏夫〉

*財団法人日本ファッション協会流行色情報センターは、2011年4月1日より
一般社団法人日本流行色協会(通称JAFCAジャフカ)となりました。