<新人紹介>色彩研究所に入所して
COLOR No.172掲載
色票製作業務に携わることになって驚いたのはその工程がかなりアナログだったということだ。塗料を目視で調色し、その塗料をスプレーガンで塗装する。これほど個人の技量が問われる仕事だったとは思ってもみなかった。調色を始めて間もない頃は二色の調色でさえもなかなか上手くできずかなりもどかしい思いをした。学生時代は美術部に所属していたこともあり、色に関しては比較的敏感だと自負していたが、実際にやってみるとあまりにも上手くいかないので、早々に自身の単純さと思い上がりを恥じることとなった。色票は塗料の違いや温度、湿度などで仕上がりが大きく変化する。それらを十分考慮して作ってもまだ思い通りにいかないことが多々あり、改めて色票製作はとても繊細な作業だと実感する。毎回試行錯誤を繰り返し、ああでもないこうでもないと唸りながら作業に励む自分とは対照に、周りの先輩たちは日々着々と業務をこなしていく。彼らの手際を見るといつか自分もあのように業務をこなせるようになれるのだろうかと少々不安になるが、今はできることを着実にやっていくしかないと必死にその手技を盗み見る毎日である。また前年度は調色の業務だけでなく多くのセミナーにも参加させて頂くことができた。食品や衣料、工業製品、景観など色彩の分野は幅広い業種に通じていることを再認識すると共に文献だけでは得られない新たな知見を広げる良い機会となった。基本的な内容だけでなく最新の動向まで知ることができるのがセミナーの利点だ。出不精なためセミナーのようなものは長らく敬遠していたが、効率よく理解を深めるためにこういった機会を活用していくことも悪くないのだと思うようになるとは自分でも驚きである。
色彩研究所に入所して早くも一年が経過した。この一年は業務を覚え、とにかく手を動かすことに必死で与えられたタスクをこなしていくことがすべてだった。それでも少しずつ成長を感じることができたのは先輩方のサポートのおかげだと切に思っている。色票製作は決して派手な仕事ではないが、狙い通りの値で製作できた時の喜びは大きい。そして自分の色票が製品として社会の片隅で役に立っていると思うと、これまで繰り返した失敗も報われるような気がする。
〈篠村 桃〉