研究第1部では、様々な調査や実験などに基づき、製品や環境の色彩に関する設計やコンサルティングを主に行っていますが、その他にも、各種団体向けのカラーセミナーの企画と講師派遣や、色彩に関する監修業務もお受けしています。以下に、最近のいくつかの事例をご紹介しましょう。

1）団体・社内・イベント向け講演

「埼玉県薬事団体連合会」特別講演

「安全につながる色使い－様々な色覚特性の理解とその対応」。6/8（金）に埼玉会館にて。
埼玉県薬事団体連合会とは、製薬協会、化粧品工業会、医療機器工業会、毒劇物協会、麻薬協会、薬剤師会など、薬事に関わる県内の12団体から構成される組織です。年1回開催される通常総会の後の特別講演を担当しました。講演内容は、会の性格を考え「安全性と色」とし、色覚異常の方や高齢者にはわかりにくい色の特徴や、色の使い方が好ましくないために情報がとらえにくい表示例などを説明しました。色覚異常の方にはわかりにくい色分け地図として、環境省「熱中症危険度表示マップ」と経済産業省「放射性廃棄物の地層処分場としての適性性マップ」を挙げました。また、大災害などで傷病者の治療優先順位を色で示す「トリアージタッグ」の問題点、糖尿病患者が使い分ける2種類の注入器の色分けなど、安全性や命にも関わる色使いの問題をお話ししました。また、問題箇所をチェックする方法、多くの方にわかりやい表示にするための色彩デザインの基本ルールについても解説しました。皆様、とても熱心にお聞きいただきました。

「カゴメ管理栄養士ラボ」社内セミナー

カゴメの色々な部署で働く管理栄養士が集まり結成された専門チームが「野菜と生活 管理栄養士ラボ」です。チームの研修日にその中の１コマとして「色と食」に関わる話をさせていただきました。6/21（木）にカゴメ本社にて。
今回の講演用に作成した、色研（2研）の測色値による食品色の分布図を右上に示します。確かに、食品の色は赤紫・赤～橙～黄～黄緑の範囲のみに分布していることが明らかです。前理事長の近江源太郎先生が食品雑誌のFFIジャーナルで書かれていた（1997）ように、暖色系から緑までの食の色に対して、和の器の藍色、紺、青磁色などは食の色と反対の色相となり、バランスが取れて調和します。器により食の色相環が完成するというイメージです。

「先生のための教材EXPO」

毎年、理科、図工、美術の教材メーカーが集まり、先生や販売店を対象にして、授業に役立つ情報や、補助教材の展示とそれを用いたワークショップなどが開催されています。今年は第8回にあたり、15社の参加がありました。8/1（水）、都立産業貿易センター台東館にて。
私は日本色研事業株式会社のブースで、「キッズデザインと色彩－色のはたらき・その世界・そして子どもたちの好きな色」というレクチャを行いました。隣のブースでの工作音が響いてきたりと、環境的には厳しいところもありましたが、予想よりも多くの方が来られて、和気あいあいとした中、子どもが好きな色についての色研調査の話（小学校低学年の男子からは圧倒的に金色が人気、女子はピンクではなく水色が好き）や、絵本を使った色の学習など、楽しくお話しをさせていただきました。

「色彩検定協会UC級勉強会」

色彩検定協会により今年12月に新しく始まる、色のユニバーサルデザインについての検定の勉強会の講師を務めました。8月から9月下旬にかけて、東京3回、大阪2回、名古屋・福岡・仙台・札幌1回ずつの土日講演であり、延べ500名ほどの参加がありました。本検定の公式テキストは色研スタッフが執筆したものです。当日は、テキストに書かれた大事なポイントの他、テキストには書かれていないけれども重要な「色覚異常」などの言葉の問題にも触れ、色を体系的に捉える実習なども行いました。土日の強行軍でしたので流石にやや疲れましたが、色彩に関心がある全国各地の方々と触れ合うことができてそれは楽しかったです。
以上、ご要望に応じた様々な色彩セミナーが可能です。お気軽にご相談いただければと存じます。

2）監修業務

COLORのバックナンバーNo.159、166においては色々な種類の監修業務をご紹介しましたので、今回は直近のものを一つだけご紹介します。
グリコ「Gift Pocky」の色彩イメージワード
ギフトポッキーとは、ちょっとした贈り物用の、手のひらサイズのポッキーのこと。10/3に販売が開始された新商品です。チョコのフレーバーには6種類あり、それぞれ違う配色の箱に入っています。下表に示したのが商品名とチョコの味、そして箱の配色から広がるイメージの世界です。色研はイメージワードの抽出と監修を行いました。
なお、ギフトポッキーは限定販売品で、展開店が決められています。「マルイの新宿本店、町田店、有楽町店」には特設イベントスペースが作られ、ルミネやアトレなどに入っている「PLAZA」の東京23店舗での販売もあります。

商品名・意味	チョコの味	配色	イメージ
Black covered with love	ミルク チョコレート	赤と焦げ茶	エネルギー・直球・愛情・内なる強い力
Grapes at midnight	グレープ	青紫と赤紫	大人・ミステリアス・夜・秘密の時間
Citrus shines in the fog	シトラス	灰色と明るい橙	新鮮・クール・洗練・さりげない個性
Berry rolling in a daydream	ベリー	ピンクの濃淡	やさしさ・幻想・ふんわり・幸福なシーズン
Sweet potato floating in the pool	スイート ポテト	空色とクリーム	さわやか・シンプル・クリア・浮遊感のある午後
Matcha against the forest	抹茶	緑の濃淡	ゆっくり・深呼吸・リラックス・木もれ日の中

色彩監修は弊所が設計、コンサルをしたものに対してだけでなく、企業などの方で検討された内容についても行ないます。ご相談ください。

〈名取 和幸〉