<巻頭言> 日塗工 塗料用標準色(色見本帳)について
COLOR No.174掲載
一般社団法人 日本塗料工業会 色彩部 一般財団法人日本色彩研究所評議員 小林 輝雄
今回、日本塗料工業会で発行している塗料用標準色(色見本帳)について執筆の依頼があり、2021年L版の発行時期でもありますので説明をさせていただければと思います。 昭和26年に日本国有鉄道と日本塗料工業会が、協議のうえ、国鉄車両用塗料の色見本帳を作成し、昭和27年には株式会社塗料報知新聞社が建築用塗料の色見本帳を作成しておりました。併せて、各塗料会社でも自社の色見本帳を作成して配布しており、塗料の売買の際に、用いられる色見本帳が多岐にわたり、色数が膨大になり取引が煩雑となったので、これを統一して色数を集約することが、日本塗料工業会役員会で提案され色見本帳を作成することが決議されました。
初版は、1954年(昭和29年)に発行されました。当時の解説文には、「日本塗料工業会役員会の決議により同会内に塗料標準色見本帳委員会を設けて慎重に研究、審議し1ヶ年余の日子を費やして作成されたものである。」とされています。また、収録色として検討した色は、1)最も一般に多く用いられている色、2)流行色、3)色彩調節によく用いられる色、4)日本工業規格(JIS)で決められた色を選び出して、整理し156色にまとめた。とされております。その他、「色の呼称は色票番号のみを用いる。例えば白、黒、あか、ふじいろ……やマンセル記号などで色を表現しないこと。」や「色の選定が終わったら速やかに色見本帳を閉じてケースに納めること。」「この色見本帳は特定の色を除いて概ね2ヶ年は甚だしい色の変化はない。」などの説明が事細かに書かれています。併せて、色の顔料組成も1色ごとに記載されており、色票自体も「塗膜のツヤは反射率40~50%程度の半ツヤのものである」「色相別に色番号をつけた」「色相別に配列した」となっております。作成部数は普及版(現在のポケット版相当)27,700部、収録色数156色、販売価格は230円、標準版5,000部(現在のワイド版相当)販売価格480円でありました。また、「色相別に色番号をつけた」ことにより、新色を増やして発行してきましたが、その後41年経って一部の色相で使用できる色票番号が足りなくなるという問題が発生しました。そのため、現在使用されている色票番号は、1995年T版発行時に旧来の色番号のつけ方から、変更をしております。
初版の色見本帳の配合票を見てみますと、現在では使用できない顔料組成、例えば鉛、クロムを含んだ顔料で色票製作が行われておりました。当時は安価で耐候性、発色性も良く使用されていましたが、現在は鉛・クロムフリー顔料により、色票は製作されております。
日塗工色見本帳(塗料用標準色)は発売されてから約67年が経過しております。2021年L版塗料用標準色は、本来であれば2021年1月に一般販売を開始している予定でありましたが、製造工程で不具合が発生したため、ご利用していただいている皆様には、大変ご迷惑をおかけしており申し訳ございません。この号が出るころには、店頭に並んでいると思います。今後も、皆様にご利用いただける、塗料用標準色を作成してまいりますのでよろしくお願いします。