一般財団法人日本色彩研究所

<研究1部報>赤いのはお好き?

pen COLOR No.154掲載

皆さんは赤いシャツを着るのはお好きでしょうか?また、どんな時にそれを着ていきますか?特に男性は赤系のシャツを着ることに抵抗がある方も少なくないと思います。しかし、最近発表されたこの論文を読めば、もしかすると、赤いシャツが着たくなるかもしれません。
2010年8月にアメリカ心理学会の学会誌に発表されたEliot, A. J. らの論文によると、赤い服を着たり、赤を背景にした写真の男性は、他の色の場合と比較して、より魅力的に見えるということです。
筆者らによると、赤は一般に考えられているように女性だけをセクシーに見せるのではなく、彼らの一連の研究で赤は男性も魅力的に見せる色であることが示されているのです。
男女の学生による調査で、同じ白黒の男性写真の背景を赤にした場合と、白にした場合とで、どの程度魅力的に感じられるかを9段階尺度で回答してもらったところ、白を背景にした場合では、男女ともほぼ同じ値を示して性差は認められませんでした。一方、赤を背景にした場合、男性では白背景と有意な差は見られなかったのですが、女性では有意な差が認められました。〔図1〕。今回の実験では、赤が男性を魅力的に見せる効果は、女性だけに顕著に現れました。

この論文の他の実験では、カラー写真の男性が着ているTシャツの色を赤と緑に変化させて、女性の被験者にその魅力を評価してもらったところ、赤いTシャツは一般的な魅力ばかりではなく、性的な魅力も有意に高く評価されていました。一方、写真の男性の性格の良さや好ましさの程度、つまり、その人が良さそうな人かどうかという評価については、赤と緑に全く違いは見られませんでした。
「赤」は異なった国や文化においては異なった意味やイメージもあると考えられますが、筆者らはアメリカ・ドイツ・中国においてデータを収集し、女性の赤い男性に対する反応には一貫した傾向があると報告しています。残念ながら、この調査に日本人のデータは含まれていないので、日本女性に当てはまるかどうかは未知の部分があります。
さらに、赤いTシャツと青いTシャツの男性写真を用いた実験でも、女性たちは赤いTシャツの男性を、青いTシャツの男性に比べて、一般的な魅力や性的魅力を高く評価すると共に、そのステータスも有意に高いと評価することが示されています。この結果は、筆者らによれば、歴史的に赤が権威や地位の象徴と用いられてきたことばかりではなく、霊長類を含めた多くの動物において、オスが赤く色付くことはその集団における高い地位を示しており、メスはオスのその変化を敏感に察知することができるという、生物学的基盤があると考えているようです。また、赤い服を着た男性は、他者に対して優位性を感じ、それが自信や行動に影響を与え、結果的に女性に印象付けることになるのでは、とも加えています。
小難しい議論は後にして、もしこれを信じるなら、男の勝負服は「赤」ということで、今度の週末は赤いシャツで出かけて、検証してみるのはいかがでしょうか。ただ、思うような結果にならなくても責任はとれません、悪しからず。
思い出してみると、『いなかっぺ大将*』で赤い越中褌を露わにした大ちゃん(風大左衛門)は、花ちゃん(森花子)やキクちゃん(大柿キク子)たちには、きっとセクシーに映ったに違いありません。

References
1. Elliot, A. J., et al. (2010). Red, Rank, and Romance in Women Viewing Men. Journal of Experimental Psychology: General, 139, 399-417.
2. “Women more attracted to men in red”, American Psychological Association, August 2, 2010
http://www.apa.org/news/press/releases/2010/08/red-attraction.aspx

〈研究第1部 江森 敏夫〉

*『いなかっぺ大将』: 川崎のぼる原作。テレビアニメ化されて1970年10月から1972年9月まで放送。