<研究1部報>色のユニバーサルデザインに関する田島ルーフィングとの取り組み
COLOR No.175掲載
色の見え方には人による違いがあります。多くの人から別々の色に見える色が、似た色に見える方も少なくありません。区別しにくい色を表示に使うと、表示が背景に埋もれて見えなかったり、色分けをしても手掛かりにならずわかりにくいことがあります。そこで最近ではこうした色の見え方の多様性に配慮し、多くの方に情報を伝えるようにすること(色のユニバーサルデザイン:色のUD)が行われるようになってきました。弊所では色のUDの重要性や方法を検定テキストやセミナーなどを通して広く社会に伝えています。2017年には床材や防水材製造メーカの田島ルーフィング様と共同で、色のUDの観点から商品の色選びをサポートするシステムの開発検討を始めました。昨年10月にその公開と運用が始まりましたのでご紹介します。
色のUDには大きく3つの方法があります。①多くの人に区別しやすい色づかいにする、②色以外の要素(形、大きさ、ハッチング等)を活用して区別しやすくする、③色名をつける、です。このうち①と②は対象を見つけやすく、読みやすくしてくれるので安全性や利便性の確保に役立ちます。③は色名が分かるので安心して会話ができますし、色名から印象が想像できて色を選びやすくなります。そこでまず多くの方が理解しやすい色名を製品につけることにしました。それは色弱の方には勿論、色を認識しにくくなる高齢者のサポートにもなりますし、さらに色覚正常の人でも色名のつけ方には違いがあるので相談時に同じ色名が使えて効果的です。
TAJIMAによる色のUDシステムは以下の3つのツールから構成されています。
- UDカラーネーム(分かりやすい系統色名)
色弱の方はいくつかの色の組合せについては色名を特定しにくく、そのため認識した色名が多くの人の呼び名とは違うという「色間違い」を体験することがあります。そのため色名のことを話すのがとても不安であったりします。また色の印象から製品を選んでも、色誤認により意図した印象にならないこともあります。
体系的な色名呼称は色弱の方への聴き取り調査に基づき、多くの人から分かりやすく、また色と色との関係も把握できるUDカラーネームと命名した色名体系を作りました。基本的な色系統(基本色名)により分類し、そこに、鮮やか、うすい、明るい、くすんだ、暗いといった色の調子を表す言葉を組み合わせて分類します。さらに、ベージュでも色みの偏りがない典型的なベージュと、赤みを帯びたあたたかみのあるベージュ、黄みを帯びたベージュに分類します。
なお、田島ルーフィングと共同でカーペットの標準的な機械測色の方法を決め全製品の色値のデータベースを作りました。UDカラーネームは測色値から分類プログラムにより容易に変換されます。 - UDカラーマップ
ベージュとオレンジと茶色は色の調子は異なりますが、いずれも色相は同じオレンジ系のグループです。このような色と色との関係をとらえやすくするため、色相と色の調子を組み合わせて碁盤目のように色パッチを並べ、それぞれのUDカラーネームを記載した地図を作りました。これがUDカラーマップです。このマップを使うと、例えば部屋の配色をクールな感じにしたいときには、青の縦に並んだ色から選べばその感じが実現できます。青のクールな感じでまとめられ、色の濃淡により調和した配色を作ることができます。またかわいい印象であれば、うすい色調に横に並んだ色を組み合わせると、そうした印象の配色を作ることができます。このように色と色名を一緒に見ながら色の地図を使うと一人でも色を検討しやすいですが、色覚タイプが異なる人同士でも、一緒に色を見ながら話しをすることができるようになります。
- 混同色抽出システム
選んだ製品に対して、色弱の方では区別しにくい色の製品を抽出してくれるシステムです。設計者などが安全性や利便性を確保するように製品色を検討するときに役立ちます。現在、最終確認中です。
下に示したサイトにもそれぞれの記述がありますのでご覧ください(ただし混同色抽出システムの記事はまだアップされていません)。そして次のステップとしては、希望するイメージとなるような製品色を検索できるシステムの開発が挙げられます。これからも色のUDの取り組みを続けてまいりますので、よろしくお願いいたします。
〈名取 和幸〉