紅茶の色はどう測定すれば良いのだろうか。ここで対象とするのは茶葉ではなく飲む紅茶（紅茶液と呼べばよいだろうか）である。通常着色液の測定は試料長10㎜長ガラスセルに入れて透過率を測定する。つまり、ガラスごと透かした時の色を計ることになるわけだが、試料長10㎜というのはガラスコップでも直径50㎜以上はあるわけだからきわめて薄いといえる。50㎜以上のセルがあれば良いのだが測定器が対応できないので他の方法を考えることとした。10㎜から50㎜に換算する方法は無いか？50㎜は10㎜を5回重ねたものだから10㎜の透過率を5乗すればよいか？でも実測透過率はガラスセル入りなのでガラスも5回重ねになってしまう。そこで水の透過率を測定してその差分から紅茶成分のみの透過率を求め、紅茶成分を5倍にすることで5倍濃度の紅茶液をシミュレーションしてみた。ランベルト・ベールの法則に従えば50㎜長に相当する。

さて、紅茶の場合もう一つ考えなくていけないことがある。器である。アイスティーを除けば多くの場合、白いティーカップに注がれるであろう。その場合、照明光は紅茶液を通りカップの白い底で反射し再び紅茶液を通り外へ飛び出し目に入ってくる。ティーカップに紅茶液を深さ50㎜注ぐと、照明光→紅茶液(50㎜)→器→紅茶液(50㎜)→目、というわけだ。紅茶液は合わせて100㎜となる。

以上ちょっとしたシミュレーションをしてみたわけだがこの中にはいくつか乱暴な行為がある。1つ目は5倍濃度を50㎜長とするには水の透過率を無視していること、2つ目は紅茶液の透過率はセルに入ったもので紅茶液単体では無いこと、3つ目はティーカップが凹型で平面ではないことなどだ。
なお、各紅茶液は同条件で抽出したものである。

〈研究第2部　小林 信治〉