<研究2部報>異種光源下で観察される色票の三刺激値計算手順―その2―
COLOR No.163掲載
前号Color 162号は、「ASTM D 1535 マンセル表色系の色指定のための標準的手順」の「補遺:マンセル表色系の三刺激値計算方法―C光源・2度視野以外の観察条件への変換」の計算手順の紹介を行った。
今号では、ASTM規格とJIS規格との計算結果の違いを確かめるため、「JIS Z 8721 色の表示方法 ― 三属性による表示」の「付属書 標準の光D65の照明下における三属性による表色系の基準」からマンセル表色系の明度6の有彩色370色(JIS規格内で三次補間等により追加された彩度1および3を除く)を抽出し比較した。その際の観察条件は「標準の光D65・2度視野」である。
図1と図2はC光源からD65光源への2度視野における観察条件の変化を示しており、CIEXYZ表色系のx–y平面による結果で、それぞれ、ASTM D 1535 補遺とJIS Z 8721付属書による「標準の光D65・2度視野」のマンセル明度6の等明度面である。矢印の始点は「補助標準の光C・2度視野」におけるマンセル表色系で規定される色度座標値であり、終点が「標準の光D65・2度視野」におけるASTM D 1535補遺による計算結果とJIS Z 8721 付属書を示している。
図1のASTM D 1535補遺では、C光源からD65光源への変換が行列式による系統的な拡大移動が示されており、特に5Y~5Gにかけて大きく、一部の色でがMacAdam Limitをこえて反射物体色の条件を外れてしまう問題を示している。一方、図2のJIS Z 8721付属書ではC光源からD65光源への変移が全体的に小さく示されている。
図3はD65光源・2度視野における観察条件でのASTM D 1535補遺とJIS Z 8721 付属書の比較結果である。矢印の始点はJIS Z 8721 付属書で、終点がASTM D 1535補遺による計算結果を示している。
図3では、a*のプラス側で下向きであり、a*のマイナス側で上向きの方向性がみられる。特に第2象限の5Yから5Gにかけての差が顕著にみられるのが分かる。矢印の長さは色差の大きさを示しており、実色票が存在しない位置ではその差が大きくなる傾向がある。ASTMを使用する際には、実色票が存在する場合にとどめた方がよいであろう。
これらの違いは、実色票の分光反射率分布をもとにした主成分分析に起因するので、次回はASTM D 1535補遺とJIS Z 8721 付属書の計算手順の違いについて紹介する。
〈那須野 信行〉