<研究2部報>異種光源下で観察される色票の三刺激値計算手順
COLOR No.162掲載
前号、Color 161号「マンセル明度Vの計算による求めかた」で「ASTM D 1535: Standard Practice for Specifying Color by the Munsell System(マンセル表色系の色指定のための標準的手順)」 にふれたところ、APPENDIXES(補遺)の「X2. METHOD FOR CALCULATING TRISTIMULUS VALUES OF MUNSELL NOTATIONS IN ILLUMINANT-OBSERVER COMBINATIONS OTHER THAN ILLUMINANT C-2°OBSERVER(マンセル表色系の三刺激値計算方法―C光源・2度視野以外の観察条件への変換) 」の計算手順に関する質問があった。
マンセル色票は「補助標準の光C」で色度座標が規定されている。しかし、実際には異種光源下で観察する場面も多く存在する。例えば、コンピュータのモニタ等で使用されるのはD65光源を白色点とするsRGB空間であるし、印刷物の色評価にはD50光源が使用されたりする。色票の色が、それぞれの観察環境下でどのような三刺激値を示すか知るためには、色票自体の分光反射率分布を求める必要がある。
そこで、日本では「JIS Z 8721 色の表示方法―三属性による表示」の「付属書 標準の光D65の照明下における三属性による表色系の基準」として、マンセル表色系の三属性に対する色度座標が計算された一覧表が掲載されている。一方、今回紹介するASTM規格では変換行列と計算方法が紹介されている。JIS規格もASTM規格も色票群の分光反射率分布に対する主成分分析によって求められたものである。今回はASTM規格の計算手順を「標準の光D65・10度視野」での計算例と共に紹介する。
手順1. (Y, x, y)から(X, Y, Z)を求める。
7.5G 5/10の色度座標を
(Y, x, y) = (19.27, 0.2200, 0.4082)とすると、
X = 0.2200 × 19.27 / 0.4082
Y = 19.27
Z = (1 – 0.2200 – 0.4082) × 19.27 / 0.4082
以上より、
(X, Y, Z) = (10.39, 19.27, 17.55).
手順2. (X, Y, Z)から(C1, C2, C3)を求める。
以上より、
C = (C1, C2, C3) = (-123.46, -62.26, -36.45).
手順3. 「標準の光D65・10度視野」における(X, Y, Z)を求める。
以上より、
Q = (X, Y, Z) = (10.86, 19.46, 15.51).
なお、手順2で示した「C光源・2度視野のT -1およびQv0」の値はマンセル色票の色度座標が規定により定まるので、手順3の「TおよびV0」を数表から参照するのみで計算できるのである。
次号に続きます。
〈那須野 信行〉