一般財団法人日本色彩研究所

<研究2部報>CIEDE2000色差式について (その3―無彩色付近での歪み補正におけるスイッチング関数Gの役割)

pen COLOR No.173掲載

前回は、重み付関数SL、SC、SHにおけるクロマの役割について解説した。今回は、「無彩色付近での歪み補正」について、以下に示す対象の式を使い解説を行う。

(式1)
(式2)
(式3)

CIEDE2000色差式は、CIELAB表色系のa*-b*色度平面における色差の許容域の計算結果が、座標中心の無彩色付近で縦長の楕円で示される補正が含まれており、色差評価の実験による4つのデータセット(BFD、Leeds、RIT-DuPont、Witt)の結果が反映されている。色差式により異なる等色差範囲(∆E=1)の違いを示したのが(図1)で、CIEDE2000色差式(太線)は補正により縦長の楕円が示されるのだが、この補正が組み込まれない色差式(細線)は真円であり、CIE94色差式(点線)は少し歪んだ円で示される違いが示されている。

補正が及ぶ等色差範囲(=1)について、補正有りと無しの場合を計算し(図2)に示した。その際使用した基準色は、彩度差=0.5、色相角差∆hab=30°の間隔で設定した。補正無し(点線)と補正有り(実線)を比較すると、座標中心においてa*方向に圧縮された縦長の楕円(実線)が点線の内側に示されているが、外周部に向け徐々に重なり、=30でほぼ一致する。

補正の程度は(式3)のスイッチング関数Gにより決定し、(式1)でa*に対し補正が行われる。(図3)はCIELABの平均クロマGの関係を示しており、その値を〇印の近くに示した。〇印の値を順にみると、が0~10のときGは0.50~0.48の上限付近で補正がよく効き、が10~30のときGは0.48~0.06の減少傾向により補正の効果が徐々薄れ、が30~50以降では0.06~0.00の下限域に達するため補正の効果が無くなる。

最後に、スイッチング関数Gの(図3)における平均クロマa*-b*色度平面の無彩色中心で回転させ立体図として書き直したのが(図4)で、中央の高さ0.5の山と周辺の高さ0の平面で構成される。縦軸の高さによってスイッチング関数による補正の効果が示されており、中央の無彩色付近では大きく、高さ0の平面に対応する有彩色では補正が行われていないことが示されている。

以上をまとめると、スイッチング関数の働きとして、対象範囲は無彩色付近に限定し、その効果はクロマの増加により低くなるように補正を行っているということである。次回は「青色領域の傾き補正」を取り上げる。(図2)において、b*軸上のマイナス側で示される楕円は反時計回りに回転し傾いて示されている。この補正について解説を行う。

〈那須野 信行〉