<研究2部報>CIEDE2000色差式について (その2―重み付け関数SL、SC、SHにおけるクロマの役割)
COLOR No.172掲載
前回は、色差式とCIEDE2000 色差式の2つの色差式を取り上げ、CIEDE2000色差式の基本構成について解説を行った。マンセル明度5の基準値を中心に、色差範囲が1になる試料色を計算した結果、色差式(式1)は、いずれの基準色においても同一な半径1の円が示され、CIEDE2000色差式は座標中心から高クロマになるに従い色度範囲が拡大し、その形状が外周部方向に延びる楕円となる特徴が示された。この外周部方向に伸びる楕円について、明度差・クロマ差・色相差に対する重み付関数SL、SC、SHにおけるクロマの役割について、CIE94色差式を使い解説を行う。
CIE94色差式(式2)は、明度差・クロマ差・色相差に対する重み付け関数SL、SC、SH(式2-a)により補正され、その程度は(式2-b)の基準色のクロマと試験色のクロマにおける幾何平均で決定される。
CIEDE2000色差式(式3)は、3項目までの基本構成はCIE94色差式と一緒であり、明度差・クロマ差・色相差に対する重み付け関数SL、SC、SH(式3-a) もSL、SHの2項目を除けばよく似ている。
図1 にマンセル明度5の2.5R・5R・7.5Rの基準色を選び、3つの色差式で計算した結果を示した。細い実線が色差式、点線がCIE94色差式、そして実線がCIEDE2000色差式である。CIE94色差式CIEDE2000色差式の示す楕円が、彩度変化においては高彩度になるに従い色差範囲が伸びて広がる傾向が等しく見られCIE94色差式におけるクロマの幾何平均やIEDE2000色差式におけるクロマの算術平均の役割が確認できた。
色相変化においては2.5R、5R、7.5Rの順にCIEDE2000色差式の実線が楕円の色相差方向で狭くなる傾向が示され、拡大図(a)の無彩色付近では、縦方向への歪む様子も見られるが、「無彩色付近での歪み補正」と「色相角による補正」を行っている為であり次回以降で解説を行う。
〈那須野 信行〉