一般財団法人日本色彩研究所

青森 環境色彩研修会 実施報告

企画準備室報告 青森県『環境色彩研修会』

景観・環境色彩担当者を対象とした色彩研修企画の一環として、青森県で日本初の自治体職員対象の「環境色彩研修会」が開催された。
青森県は県と県内市町村の景観に関わる担当職員45名を集めて、色彩に関する専門的な知識の習得や、色彩感覚の訓練、環境色彩計画についての概論などを交えた研修会を10月9日・10日の2日間にわたって県庁で開催した。
景観は文化的な問題として考える青森県は、環境生活部、文化.スポーツ振興課景観グループが担当している。今回の研修も同グループが中心となって実施された。
行政職員は担当部署を2~3年で異動する。専門性の高い景観担当も例外でなく、色彩の問題について理解できた時には全く別の担当に移っていく。そして、新任の担当者がまた勉強を始めることになる。
このような状況を踏まえて、行政サービスの向上を目指し研修会が企画された。それは、職員の中に色彩についての専門知識や技能を修得した人材を一人でも多く養成すれば、担当部署が移っても色彩に関する問題解決能力を有した職員が多数いることにより、常に一定水準以上の能力を持つことができるのではないかというものである。
ほぼ1年がかりで、カリキュラムの内容・構成や用いる資料・用具などについて検討を行い、現実的に多数の職員を研修で同時に拘束する限度は2日間という結論になり、延べ11時間のプログラムとなった。
受講者の内訳は、県内の6市、9町、6村から合計45名。担当部課は環境政策課、自然保護課をはじめ、観光、農林水産、道路、建築、港湾など幅広い課や県土整備事務所、公共建築物色彩検討委員会委員などであった。 色彩問題の関係領域の広さが表れている。
まちづくり、観光開発、屋外広告物の取扱い、防災関連の誘導サイン、公共施設の外観、公共サイン、まちなみ整備など、まち独特の雰囲気づくりから、的確な視覚情報伝達まで、分かりやすく安心でき、快適な生活環境を整備・育成していく上で、色彩は大きな役割を担う。 色彩を有効に利用するためにも、必要十分な基礎知識の学習と、使いこなす技術、技能の修得は担当者には不可欠である。
しかし、残念ながら今まで、学校教育の中で「色彩」に関しての専門教育は行われていない。 建築、土木の専門教育の場でさえ例外でない。 視覚的な環境に関しても、バリアフリーが求められるだけでなく、「美しい国づくり政策大綱」が発表されたように、生活環境に美しさを求めて魅力あるものにしていくことが課題となった今、色彩に関する研修の意義は大いに評価されるのではないだろうか。
先駆的な事業を計画し実施した青森県が、その成果を実績として積み上げていくことに期待したい。
また、同様の人材育成が、全国の行政機関でも行われ、色彩に対する認識がより一層深まっていくことが、美しい国づくりには大切なことであると信じる。

(松井 英明)

10/9(木)付けの『東奥日報』および『デーリー東北』にて、研修会の様子が報道されました。

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