<研究1部報>ムンバイの青い屋根
COLOR No.165掲載
色彩意識調査のため、7月末にインドのムンバイを訪れた。室内での長時間にわたる調査であり視察はあまりできなかったが、印象に残った色使いのいくつかを紹介してみたい。
青い屋根の街並み
ムンバイ国際空港に飛行機が近づくと、窓の下には市街地が見え始めそれが徐々に広がっていく。目にしたのは、数多くの青い建物が散らばる街並みであった。意表をつかれ新鮮に感じた。ムンバイの第一印象である。その後、空港から街に向かい、市街を移動するときに、上空から見えた青い建物の多くが、雨を防ぐ青いビニールシートで屋根を覆った住居であることがわかった。それはスラム街に特に多い。雨季のムンバイでは雨は降るときはとことん降る。青いシートは機能的ではある。ただ、シート以外にも青く塗装された屋根や屋根材も見かけた。駅舎の屋根や、街中の塀にも青や水色が使われていた。ムンバイの人々は青をどのように感じているのだろうか。なお、インドでは青い塗料が安いと、建築事務所スタジオムンバイの方が話されているのだが、それも青が多い理由なのだろうか。
黒と黄色のツートンタクシー
ボディが黒で屋根が黄色のタクシーがとても多い。インドの定番タクシーの色である。オートリキシャと呼ばれる3輪の小型タクシーも、ムンバイでは黒に黄色のラインの配色となっている。中には青と白に塗られたタクシーもあるがこちらはエアコン付きらしい。
街路樹のカラーストライプ
車道脇の街路樹には、幹の地表近くの部分が白と茶色のラインになっているものがとても多いことに気づいた。地元のインドの方に聞いてみると、それは国や市が管理をしている木であることの目印だという。勝手に切って持っていってはいけない木であることを示しているのである。そうまでしないと、薪にされたり売られたりしたのだろうか。
カラフルな女性の服装
街行く男性の服は思いの他、地味である。映画制作数が年間1000本以上と世界第一位のインド。その総本山がムンバイだが、派手な服を着た男女が街中で突然歌って踊ることは勿論ない。実際、男性は襟付きのシャツにジーンズが多くを占める(ガイドブックには雨が乾きやすい薄いパンツがよく、ジーンズは避けた方がよいとあったが)。一方、女性の服装は実に華やかである。伝統的なサリーやパンジャビドレスを着ている女性が多いこととも関係がある。サリーは一枚の布でペチコートとブラウスの上からまとう。一方、パンジャビドレスは、スリット入りのワンピースに細身パンツの組合せで通常ストールが巻かれる。サリーは農村・下層での着用率が高く、都市部では正式の服、やや年配の服としてみられているようだ。若い女性はサリーをあまり着ず、パンジャビドレスが多い。そして、服の色は日本ではあり得ないくらいビビッドで、色相のコントラストが強い配色。柄も非常にはっきりとしている。しかしながら、センスよくまとめられているのは流石である。建物外観の彩度は低めなムンバイ。その中に華やかな女性たちの服装の色が印象的だった。
〈名取 和幸〉