<研究1部報>色別面積比の計算・表示機能をもつソフトの開発
COLOR No.172掲載
色彩デザインの分野は様々であり、ファッションやインテリア、街並みに各種製品、Web や広告デザインなど、限りない広がりをもつ。そしてその全てにおいて、検討したい対象の色の特徴を捉えたいという思いは共通して強い。そのためには、対象を構成している色がわかるだけでは不十分で、それぞれの色がどの程度の割合を占めているのかまでも把握することが重要である。しかしながら、そうしたニーズに応え、分析結果を簡便に図表に展開できるソフトはこれまで見当たらなかった。そこで私たちは、先頃発表した色彩集計ソフト「PCCS ColorCalc」で開発したプログラムを使用し、対象画像の色別面積比を、色系統や色相・トーンといったレベルで集計、図示するプログラムの開発に取り掛かった。この度、そのプログラムが完成したので、製品化の前にその内容を簡単にご報告したいと思う。
本プログラムの主な機能は、ビットマップ形式等の画像データから、ピクセル単位でRGB 値を系統色名に変換し、色名ごとのピクセル数から、画像全体における各色名領域の割合を算出するものである。
今回、画像の色別面積比を算出するためにはクリアすべき課題が大きく分けて3つあった。
1つめは、対象からどのくらいの密度で色をピックアップするか(サンプル密度)、ということである。一般の測色機器を使用した場合には、通常、測定箇所は多くても数十ヶ所程度であろう。また、画像処理によって、対象画像をメッシュ状に等分割しブロックごとに色値を抽出したり平均値を算出したりする方法もある。これらの方法により対象の大まかな色分布や偏りを把握することはできても、取りこぼすデータも多く全体を反映しきれていない可能性があった。そこで、本プログラムでは画像からピクセル単位で全ての色データを取得できるようにし、さらにサンプル密度をユーザー側で設定して自由に変えることができるようにした。その結果、対象の色彩情報を、的確、且つ効率よくとらえることができるようになった。
課題の2 つめは取得した色値の変換である。画像データからピクセルごとにRGB 値を取得することは新しい方法ではないが、取得したRGB 値をマンセル表色系のような他のカラーシステムの色値に変換することには専門的な色彩知識が必要である。色研では前述の色彩集計ソフトのように、sRGB からL*a*b* やマンセル値への変換、またその逆の変換といった複数の表色系間の色値変換が可能なプログラムを開発済みであり、それを活用して問題をクリアした。
そして3 つめの課題は、取得した値をどのように色名に分類するかである。色名別の面積比を求めるには、当然ながら、色空間の中をどのように系統的に色名で区分するかが確立されていないと不可能である。その点においても、色研では色を明確な区分により系統的に分類できる表色系PCCS を考案している。PCCS の系統色名区分を用いることよって、sRGB 値からマンセル値への色値変換、マンセル値からPCCS 色名系統や色相・トーンへの変換というステップで、画像のピクセル単位のデータを色名単位にまで落とし込むことができたため、面積比の算出が可能となった。
現在設計中の製品ソフトにおいては、画像色についてのPCCS 系統色名の大分類(色系統)と中分類(色の系統×トーン)への変換と、色名別の面積比を集計表(色相×トーンの表も含む)やグラフなどに自動的に作成してくれる機能を搭載する。さらに、ユーザーの要望があればPCCS 以外にも任意のカラーシステムや分類方法で集計するように設定することもプログラム上では可能であり、カスタマイズオプションも検討中である。
この度開発した色別の面積算出プログラムは幅広い分野への活用が期待できる。今後、ソフトへの展開を進め、早い時期での製品化を目指すものである。ご期待ください。
〈佐々木三公子〉