<研究2部報>反射率を考える
COLOR No.138掲載
僕が小学生の頃、「本を読む事」に情熱を燃やした一時期があった。図書館の棚にズラリと並ぶ佐藤さとるさんの作品。それを片っ端から読んでいった。
佐藤さとるさんと言えば、日本のファンタジー作家の第一人者。その作品の挿絵には、村上勉さんのさわやかで暖かみにあふれた絵が散りばめられていた。数ページ読んだところで、村上勉さんのやさしい絵から、空想の世界を更に大きく広げていく。今とは全く異なる読み方で、本の世界を旅していたのだろうと思う。
「おばあさんのひこうき」・「大きな木がほしい」・「あかんぼ大将」・「ポケットだらけの服」などがお気に入りの作品。そして「コロボックル物語1-だれも知らない小さな国」は絶対に忘れられない。
この作品は、人間から隠れて生きる身長3センチの小人の一族「コロボックル」の物語である。実は、つい最近インターネットで知ったのであるが、1月中旬に偕成社から「だれも知らない小さな話 随筆集」が出るということを発見してしまった。もうワクワク・ドキドキと期待に胸躍らせる毎日なのです。
さて、これから反射率について少々お話をしようと思います。小人のコロボックルたちにお手伝いを頼んで、考えてみる事にしましょう。
まず、我々が物体を見るときの流れを整理してみましょう。
- 物体を照らす光源
- 光に照らされる物体
- 物体を見る目
最低限、これら3つが必要となります。
例えば今、板の上に100人のコロボックルたちがぎっしりと並んでいるとしましょう。電球からはたくさんの光の球が投げられています。コロボックルたちにとっては不必要なものなので、放り出してしまいます。
それら、放り出された光の球を僕が受け取る事とします。これらを整理しますと、
- 電球から投げられるたくさんの光の球
- コロボックルたちが放り出す光の球
- 僕の受け取る光の球
といった事となります。
100%の反射率を持つ白色。これは、コロボックル100人が一生懸命働き、板の上に残る光の球が無い状態となります。3番目に書かれている「僕」すなわち「目」が受け取れるのは、この一部の光の玉なのです。これが反射率100%の白色であり、基準となるものです。
ここで気をつけるべき事は、2番目でコロボックルたちがアチラコチラに光の球を放り出すということです。もし、ここで光の球をコロボックルたちがエイヤと一斉に僕に投げてきたら、これは鏡を見ているのと同じ。生の光源を見ているようなものです。
こんどは、0%の反射率を持つ黒色を考えてみましょう。これは簡単!コロボックルたちが一人もいない状態。つまり、僕に投げ出される光の球がひとつも無い状態なのです。
それでは、50%の反射率を持つ灰色は? みなさん、もうおわかりでしょう!
100人のコロボックルたちの内、50人が働いている状態なのです。しかし、50人が一生懸命働いてくれてはいるものの、100人の時のようにすべての球を放り出す訳にはいかないのです。どうしてもコロボックスの乗る板の上には、半分の光の球が残されてしまいます。僕が受け取る光の球の数は、もちろん100%の反射率を持つ白色のそれと比べれば半分となってしまうのです。
ここで一度、これまでの事を振り返ってみましょう。
僕の受け取る光の球の数が、反射率が100%の時、50%の時、0%の時の3つについて考えてきました。仮に、「1.電球から投げられるたくさんの光の球」の数が倍になったとしましょう。
すると、灰色の時に僕の受け取る球の数と、倍になっていない時の白色の球の数とが一緒になります。すると、この色は灰色なのか、それとも白色なのか困った事になります。白色はいつ見ても白色、灰色はいつ見ても灰色なのです。
実は、反射率とは一定の明るさのもとで、白色を見た時の「3.僕の受け取る光の球」を100%として考えてしまえば良いのです。そうすれば、いつでも白色は白色であり、灰色は灰色として捉えることが出来るのです。 つまり、「明度とは光源の明るさによらないもので、物体の反射率により定められるもの」と言い換えることが出来ます。
最後に、次回に向けてちょっと質問です。
白と黒の市松模様を描いて下さい。そしてマンセル明度のスケールで、明度の確認をして下さい。
N5になりそうに思っていたら、それは間違いです!
次回、「反射率とマンセル明度」でお答えしましょう。
〈研究第2部 那須野信行〉