一般財団法人日本色彩研究所

日・中・韓色彩比較調査

色とファッションに関する日韓中の若者の意識と実態について

「韓流」という二文字をよく見かける。 韓国大衆文化へのブームのことである。かつては焼き肉とエステの国のイメージが強かった韓国に対し、そこに暮らす人や文化の側面に多くの日本人が感心を抱いている。

韓国は不景気の中にあるが、隣の中国は2008年の北京オリンピックに向けて目覚ましい経済復興が続き、国際的にも注目されている。現在、日本では欧米への関心一辺倒から、他の国々、中でも中国、韓国という北東アジアへの注目度は高まっているようだ。日本を含めこれらの国は、いずれも太陽の色を直接的には赤とみなし、また白を好むという共通性を持つ。肌の色も近い。しかし、共通性ばかりで安心してはいられない…。

さて、日本色彩研究所は、今年度から日韓中の人々の色彩意識や暮らしの中の色彩についての調査を開始した。(Color No.141 研究第1部部報参照)。この研究は、「アジアファッションカラー研究会*」の活動の一部として計画され、調査は日本流行色協会、日本ファッション協会との共同により行われたものである。

4月には留学生インタビュー調査、5月のソウルと北京での現地視察に引き続き、9月〜10月にかけて3ヶ国の大学生を対象とした色彩アンケート調査を行った。調査結果は、第1回アジアファッション連合会 韓国大会において11月4日に報告された。本稿では調査結果の一部を紹介したい。

方 法

【概要】
色相とトーンにより体系的に選定された計67色(金銀を含む)のカラーチャートを用いて、質問について当てはまる色を選択させる。

【回答者】
東京、ソウル、北京、上海在住の男女大学生、計1,662名(専攻は美術・デザイン、服飾、工学系等)

【質問内容】
・色や流行に関する意識
・ヘアカラリング
・色彩好悪
・各種製品ごとの所有色と欲しい色
・良く着用する服飾の色(春夏/秋冬)

結果の要点

  • ソウルで人気の高い「赤い炊飯器」
  • 上海とソウルでは流行への関心が非常に高く、暮らしへの取り入れも盛んである。一方、東京の学生は流行に対する関心がそれほど高くはない。
  • 色彩への関心は、すべての都市において、特に女性で非常に高い(関心有りが95%程度)。
  • ヘアカラーリングをしている学生は東京が最も多く、中国では染めたことが無い学生が多い(女性4割、男性7割)。ソウルでは現在髪を染めている男子学生は少ないが、カラリング経験者は非常に多く、東京と同じ8割に達する。
  • 中国(北京、上海)では他の都市よりも赤が好まれ、上海では白が好まれる。
  • 上海以外では女性はピンクを好む傾向が強いが(1〜3位)、上海ではもっと明るいはっきりした色が好まれる(黄、水色、赤、白等)。
  • 中国の女性は紺色を嫌う傾向がある(嫌悪4位)
  • 日本ではダークグレーや紺色を嫌う学生は少なく、ゴールドを嫌う傾向がある。他の都市ではダークグレーを嫌う学生が男女共に多く、ゴールドは逆に嫌われていない。
  • ソウルでは3人に1人が赤い炊飯器を使用しており、次にも赤が欲しいという回答が多い(右上写真はすべて赤い炊飯器)。
  • スーツについて、東京では男女学生共に黒、ダークグレー、紺を一年中着ているのに対し、中国や韓国では夏に白いスーツが増える。上海の女性は色とりどりのスーツを身につける。これらの傾向はジャケットでも類似している。

(一財)日本色彩研究所理事・研究第一部課長 名取和幸