<研究2部報>色評価のための訓練方法
COLOR No.154掲載
JIS Z 8723「表面色の視感比較方法」では、色評価に従事する観察者の特性を次のように規定している。
- 微妙な色の違いを判断する能力を有すること。
- そのためには、色覚検査表での検査をパスすること。
- 更に、微妙な色判定に従事する者の選択には、色相配列検査器又はアノマルスコープ検査器のように感度の高い検査が望ましい。
- 色覚の加齢変化を考慮し、40歳以上の観察者はアノマルスコープ検査器か条件等色検査器などを用いて検査する。
どの程度の色の差まで識別できるかどうかは、日頃の訓練によって向上することが知られているが、どのような訓練をすればいいかについては、JIS Z 8723には規定されていない。一方、アメリカの規格であるASTM E1499:1992「観測者の選抜、評価及び訓練のための標準的指針」では、評価者の選抜、能力の評価、訓練、試験の方法が規定されている。この規格は、当研究所と交流のあったF. W. Billmeyer, Jr.氏が中心になって作成されたもので、色彩能力テスターによる評価も採用されている。ASTM E1499の内容を要約すると以下のようになる。
- 適用範囲
- この指針は、知覚に伴う作業、特性の尺度化、および色の見えに関連する現象について、視感検知 器としての観測者の選抜、評価、および訓練の規準と試験について述べる。
- 3(省略)
- 参考文書(省略)
- 用語(省略)
- 指針の要約
- この指針は、視感による試験に用いるための評価者の候補者の選抜、この分野における評価者の能力の評価、これらの能力を高めるための訓練の方法及び試験の説明を与える。
- 評価者および様々な試験の管理に過度な負担がかかることを避けることを含めた視感試験における評価者の効果的使用に求められる事前対策を与える。
- 観測者の数、観測の要件、視感結果の精度を含めた試験のほかに考慮すべき事柄は、ほかのところで扱われている。
- 意味と用途(省略)
- 評価者の選抜と評価
- (省略)、
- 2色覚検査、
- 仮性同色表(省略)
- Color Rule検査(訳文省略)「条件等色対の等色点を判定する方法の記述で、D&H Color Ruleによる判定に相当する。」
- Farnsworth-Munsell 100色相配列検査(省略)「仮性同色表検査が正確に色の欠陥の要因を分離するのに対して、Farnsworth-Munsell 100色相配列検査は、直接および詳細に色識別性を測定することを記述し、色覚異常の解析のために補助的な検査としている。
- 視力および識別試験 (省略)
- Farnsworth-Munsell 100色相配列検査(詳細省略)
色識別性の評価の目的のために、検査結果は、ほぼ一定であることが試験される。しかし、色相環全体の試験色票の配列に明らかな誤差レベルがある。これは、隣接色票間の小さな色差を識別することができないことを説明する。この種の弱さは、例えば、閾値構成実験に加わる観測者の能力を妨げるけれど、観測者は、まだ、大色差の比率尺度を行う能力があるかもしれない。 - 三点検査 - この検査は、日本色識別検査(訳者注:色彩能力テスター、日本色彩研究所製)として知られているシリーズの一つである。観測者は、3つの色票それぞれの30組みのシリーズを一度に一つずつ見せられる。それぞれの組で、色票の2つは等しく、3番目は色がわずかに異なっている。観測者は、1つが違っている場所を見分けることを尋ねられる。色差は、判定においてかなりの不確かさがあるほど小さい。この検査で、平均スコアより低い値は、観測者が小さい色差をうまく区別していないことを示す。
- Farnsworth-Munsell 100色相配列検査(詳細省略)
- 比率尺度検査
- 長さの評価 (省略)「基準線を用いた比例尺度についての記述」
- 色の評価 - 日本色識別検査(訳者注:色彩能力テスター)の81枚のセットは、見えの属性の比例尺度について、求められた判断の種類に対して観測者の感じた番号を評価する。これらのカードのそれぞれは、水平に並んだ3色の色票を含んでいる。左の色票を1とし、右の色票を10とする。中の色票は、ある色属性上に左右2つの色票の間に置かれている。作業は、中心の色票について1と10の間に尺度値を割り当てることである。この試験では、色相、明度および彩度の色属性は、ランダムに評価される。
- (省略)「6. 3及び6. 4の結果についての注記についての記述」
- 観測者の訓練
- 観測者を用いることの事前対策
- 正確さと偏り(省略)「訓練期間、習熟度の評価、観測者への配慮、観察条件への配慮についての記述」
ASTM E1499には色彩能力テスターの三点識別テスト、目測補間テストが紹介されているが、その判断基準は示されていない。当研究所で実施している「実習で学ぶ 表面色の比較方法」では基準を設定し、観測者の評価を体験的に実施している。また、企業におけて色彩能力テスターを使った訓練で識別能力が向上することが確認されている。評価者の選抜、能力の評価、訓練に色彩能力テスターは有効な検査セットと考えている。
〈研究第2部 小松原 仁〉