一般財団法人日本色彩研究所

<研究2部報>演色性評価における試験色について

pen COLOR No.153掲載

光源の演色性の評価はJIS Z8726にしたがって行われ試験色と呼ばれる仮想の物体色を試験光源下と基準光源下で数値計算によって評価しその差の大小が評価のもととなる。しかし試験色は仮想の物体色なので実物として入手することはできない。実際に目視観察するためには試験色に近似した色票を使わざるを得ないため、評価に差が生じることが避けられない。そこで実際にどの程度の違いが現れるのかを蛍光灯F1からF12を用いて調べてみた。
使用した色票の試験色のマンセル値をほぼ再現したものだが、R7とR8は再現仕切れずに彩度が低いものを使用した。分光反射率の違いから明らかに色材が異なることが判る。

表1に評価結果(R1~R8は各評価色の評価値、Raは平均点)を示す。図1に規格色と色票による評価数の比較を示す。R7とR8を除いて、規格色と色票の評価は概ね、特に高演色型蛍光灯(F7~F9)はよく一致している。三波長型蛍光灯(F10~F12)では色によって色票による評価値が低く出るなどするが、差異の大小は色と光源の組合せによる。これらの原因は試験色の分光反射率の違いに起因するので、分光反射率を一致させればこれらの差異は理論上無くなる訳だが、現実的な色票を用いる際にはこのような差異が生じることを理解して使用しなければならない。また、このような用途にはアイソメリックな色票複製技術の確立が望まれる。

〈研究第2部 小林 信治〉

【表1 評価結果】
試験色 試験光源
F1 F2 F3 F4 F5 F6 F7 F8 F9 F10 F11 F12
Ra 規格色
色票色
75.8
79.9
64.2
70.4
56.7
64.2
51.4
59.4
71.7
76.0
59.0
65.9
90.2
91.8
95.1
95.8
90.3
91.9
80.7
81.4
82.8
81.3
83.1
83.6
R1 規格色
色票色
69.1
73.0
55.9
61.0
47.6
53.2
42.0
47.7
63.2
67.5
49.2
54.9
89.2
91.0
97.5
98.4
89.6
91.5
93.7
95.1
98.3
91.9
98.9
91.2
R2 規格色
色票色
83.6
83.1
76.7
75.9
72.2
71.4
69.9
69.2
80.1
79.3
72.0
70.8
91.9
91.4
96.4
95.9
92.6
91.8
89.6
84.8
92.9
87.6
95.2
89.8
R3 規格色
色票色
92.1
90.7
90.3
89.5
89.8
89.1
90.4
88.2
90.7
89.6
88.3
88.9
90.8
93.0
90.9
92.2
90.5
92.8
52.5
58.5
50.4
56.2
54.1
60.4
R4 規格色
色票色
72.7
71.2
57.0
57.3
46.5
47.9
37.8
39.7
67.3
65.9
51.0
51.9
90.7
92.3
95.6
96.7
90.2
92.6
85.6
87.6
88.4
84.7
89.4
84.7
R5 規格色
色票色
73.9
73.8
59.0
58.9
48.7
48.6
40.9
40.6
68.5
68.5
52.0
52.1
90.4
90.6
96.7
97.2
89.5
89.8
83.9
86.7
87.3
90.9
88.0
92.5
R6 規格色
色票色
79.6
79.6
67.2
67.6
58.9
59.6
53.7
54.9
75.1
75.1
60.2
60.5
88.8
88.9
94.0
94.2
87.9
88.3
73.8
72.6
77.3
76.0
82.6
81.5
R7 規格色
色票色
82.3
91.6
74.1
88.0
69.0
85.7
64.9
83.3
80.8
90.3
72.6
87.1
92.6
94.7
94.6
95.8
93.6
95.4
87.1
83.9
88.5
83.9
88.6
86.7
R8 規格色
色票色
53.4
76.5
33.2
65.5
20.7
58.1
11.3
51.8
47.7
71.9
26.8
61.2
87.2
92.8
95.4
96.4
88.6
93.4
79.6
82.5
79.5
79.6
67.7
81.9
図1.規格色と色票による評価数の比
図2.規格色と色票の分光反射率の比較(1)
図3.規格色と色票の分光反射率の比較(2)