<研究2部報>図で読むL*a*b* 表色系 と L*u*v* 表色系(その1)
COLOR No.149掲載
色彩セミナーでは、休み時間によく質問を受けます。その中でも特に多いのが、1976年に国際照明委員会(CIE)により勧告された「L*a*b*表色系と L*u*v*表色系」の違いについてです。そこで、図の比較によりそれぞれの特徴を読み解いていきます。それには、マンセル表色系のマンセルグリッドと、マクアダムの弁別楕円を使います。
まずは、マンセル表色系です。これは、色の三属性である「色相・明度・彩度」の知覚的な等歩度性に基づいています。図1(a)は、円筒座標系における明度5の等色相断面を表示しています。中心から放射状に伸びる直線である等色相線と同心円状に広がる等彩度線によるマンセルグリッドが規則正しく描かれています。これがCIEXYZ表色系のxy色度図上では、図1(b)のように大きな歪みが生じます。等色相線の直線は湾曲し、色相の方位性も間隔も整っていません。等彩度線は大きく歪み、その間隔も色相によって偏りがあります。
次に、マクアダムの偏差楕円です。図1(b)に描かれた大小25の楕円がそれです。1942年、イーストマン・コダック社の研究員であったマクアダムは、25色の等色実験を行いました。フィルタの組み合わせで等しい色を何回も作り、そのばらつきが偏差楕円になります。これらは、色の違いにおける識別域を示しています(この図では10倍に拡大して描かれています)。偏差楕円の大きさは、大小様々ですが、これを均一化すれば良いことが予想できます。
それでは、L*a*b*表色系(図1(c))とL*u*v*表色系(図1(d))について考えてみます。
マンセルグリッドとの比較がしやすいように、図2を用意しました。図1(a)を72度の回転と左右反転を行っています。これを基準に比較を行うと、L*a*b*表色系の方が明らかに良いです。色相・彩度の属性における位置関係が改善されています。 マクアダムの偏差楕円では、L*u*v*表色系の方が、偏差楕円の均一性が良いのが分かります。
それぞれの色空間の特徴の違いが、良く示されています。CIEXYZ表色系を変換する際、非線形あるいは線形変換をするかによって違いが出るのですが、これについては次回以降で説明します。
次回は、L*a*b*表色系の基になったアダムスのクロマティック・バリュー空間とGlasserらのCube-Root空間について紹介する予定です。
〈研究第2部 那須野信行〉