<ブックレビュー>和の色手帖
COLOR No.142掲載
- 石田 純子著、武井 邦彦監修
- 本体価格 2,600円
- 出版:グラフィック社/サイズ:A5判・175P
- ISBN:4-7661-1552-X/発行年月:2004年12月
色名はそれぞれの社会の色彩文化を反映しており、ある色に対する社会的な需要や技術、さらにその使用法や連想や象徴といった文化的な背景を物語っている。もちろん、日本の伝統色名も日本固有の色彩文化を反映したものであるはずだ。しかし,現代社会では一般的に日本の伝統色名を利用する機会はあまり多くはなく、その含意するものも失われつつあるのかもしれないが,このような時代の中で日本の伝統色を知ることは、われわれ日本人が長年培ってきた色に対する豊かな感受性の一端を取り戻すことになるのかもしれない。
さて、この「和の色手帳」であるが、180色の日本の伝統色を”赤系の色”、”橙・茶系の色”、”黄系の色”、”緑系の色”、”青系の色”、”紫系の色”、”白・灰・黒系の色”に7つのカテゴリに分類し、それぞれの色名の由来や歴史などを豊富な写真図版と共に解説している。また、配色実例として日本の伝統色を使用しているロゴ、パッケージ、本の装丁、各種プロダクトなど、現代のデザインに生かされた例が多数紹介されている。
なお、各色名の代表色には印刷用にCMYK値、モニター用のRGB値、そしてWeb用にRGB値の16進数が併記されており、様々な用途に各色が利用できるようになっている。さらに、各色ごとに「色文字」「白抜き」「墨ノセ」「0.5ミリケイ」「0.2ミリケイ」の見え方も表示している。
巻末には、本文で解説されている赤系28色、橙・茶系44色、黄系14色、緑系29色、青系24色、白・灰・黒系25色の計180色のカラーチップが付けられており、切り取っていろいろ利用できるように工夫されている。
表紙には「Webやイラスト、印刷もやさしい和風の色指定!」とあるが、”「ゴフン」(胡粉)の地に鮮やかな「カラクレナイ」(唐紅)の題字、写真の周りには効果的に「シッコク」(漆黒)を配し、所々に「カリヤス」(刈安)でアクセントを施します”などとは、なかなかいかないかもしれないが…。
〈研究第1部 江森敏夫〉